2023年11月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋 沖村春岑 大村清琴

漢字規定部(師範合格者)

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小柳 奈摘
皇甫誕碑は秀麗に、五言絶句行書は流暢に表現。共に佳し。

漢字規定部(昇段試験合格者)

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門田 容子
起筆の美しさが際立つ。縦画の運筆にも力がみなぎる。
川原 礼子
滑らかなタッチ。運筆の速度の変化が見事。
河合 紀子
切れ味鋭い毛先の用い方に目が引かれる。落款も佳し。
久野 喜代
温和な運筆、安定感のある結体。このくらいの墨量が良い。
大場 愛
雄渾な北魏楷書に挑戦。更に横画の逆押し出しに力を。
望月 玲子
規定正しい入筆を心掛けた。もう少し運筆を心掛けよう。
佐藤 満弓
奇をてらうことなく、中国南方系の運筆に留意した作。
片瀬 仁美
円運動と側筆を巧みに用いた智永千字文の臨書です。
【選出所感】
小柳菜摘さんが二回目の昇段試験でめでたく師範に合格されました。皇甫誕碑の臨書は骨格のしっかりとした明澄さを有した作品でした。行書はもう一つ若さを表現してもよかったかとは思いますが、米芾の調子を取り込んだ秀作でした。今後も真摯に書に取り組んでください。
五言絶句の作品は、やはり唐楷調と行書作品が多く寄せられました。普段からこの二体の出品が半紙においても半切においても多いことから、納得のいく点数だったかと思います。今回挑戦して頂いた方は、この調子で励んでいただければ順当に昇段していくものと思われます。ただ、墨の用い方、つまり潤渇の変化は欲しいところです。草書体は全体的にもう一つ滑らかさが表現されると良いですね。上づった線ではなく、筆力の入った草体を望みます。
七言絶句の作品中、三点行書、一点ずつ楷書と隷書です。字数が少ないうちに筆圧を入れることを心掛けてください。それから実用書部にも今から備えてください。もともと尺牘(せきとく)と言って、書は手紙文からスタートしたのですから、細字においても毛筆の機能を十分に生かして書いてください。
特級までの方の半紙への取り組み大変結構でした。三名の方、臨書作品は、有段者の腕前です。

[岡田明洋]

漢字規定部(月例課題)

山田 淥苑
重厚かつ柔和な線で北魏楷書を表現した。渇筆も望む。
永嶋 妙漣
伸びやかな線。米芾の結構を巧みに用いた秀作
鈴木 藍泉
一糸の乱れもない楷書。更に筆圧の変化を求む。
藤田 紫雲
肥痩の変化を用いながら、大胆な運筆に挑戦した。

条幅部

萩尾 惺雲
北魏楷書を字典より集字してからの創作。気力溢れる作。
鈴木 藍泉
直筆的な運筆大いに佳し。更に陰陽法を手に入れよう。
平垣 雅敏
円筆的な起筆の北魏楷書、雄渾な二十文字見事です。
宮﨑 蓮㳺
居延の竹簡ベース。最初の五文字に墨量を望む。
【選出所感】
北魏楷書、雅敏さん・天暁さん・平吉さん。行書、櫻徑さん・友美さん・紅仁乃さん・吟月さん。隷書、青蘭さん、草書、恵さんが次点でした。この方たちの作品も、昇段試験受験者の方たちにとって良い壁になってくれたと思います。お互いに良い関係で切磋琢磨してくれればと願います。
条幅部には、秦隷調から始まった、隷書・草書・行書・北魏楷書までの出書がありました。この方々は、県展(ふじの国芸術祭)に入選されている方たちですので、相当レベルの高い作品だと思います。その方たちの中に入って、伍して戦えるような方を師範合格としていきたいと思っています。信念で言えば、「気満」「気韻生動」ということになるかと思います。書の歴史を知り、多様な表現方法を認め合う会になることを願っています。
壁にぶつかってもめげないで挑戦していこう。その気持ちを支えていこうと念じています。

[岡田明洋]

実用書部

長野 青蘭
ペン字には肥痩を、細字には側筆を巧みに用いた秀作。
市川 章子
律儀な表現。どちらも線の幅・広がりに注意しよう。
【昇段試験対策】
課題Ⅰ.2㎝マスの枠の中に書かれている毛筆細字のお手本の線より、大概の方は、太く書いているようです。太く書けば、枠からはみ出してしまう方もいます。どうすれば、細い線になるかというと、起筆の時に中指をつかって筆管に当てるようにすると筆が立ちます。基本的に縦画は、強く入って、軽く縦に引きます。横画は2の力で入って、3の力でまとめるようにします。すこしずつ筆圧を高めても良いでしょう。転折のところは、二画で書く意識を持つことが大切です。ですから横線は少しずつ細めにして紙から離すような気持で縦線で二本目の線と書くようなつもりで打ってから下にむかえば良いでしょう。
課題Ⅱ.これは私の普段勝手の字にすこし気取りを入れて書いたものです。丸谷才一氏の文章読本にある「ちょっと気取って書け」という語句をペン字の時の拠り所にしています。
課題Ⅲ.和歌は、行書と仮名の二つの書体があるので、文字の振幅を大切にしています。横線の長さや懐の広さで幅を出します。その裏返しのような気持ちで、仮名部の連綿にして縦への流れを出します。「豚」旁の中心の縦線の左サイドは二画です。字典で確認ください。「居・焼」も誤字を書かないように注意しましょう。

[岡田明洋]