2023年01月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋

漢字規定部(初段以上)

※作品は押すと単体で表示されます

永嶋 妙漣
鋭利な線、極度な求心性、緊張感溢れる行書作品です。
山木 曄真
王鐸の巻子草書帖をみるようなリズムを持った作。
萩尾 惺雲
蔵鋒の起筆に墨を蓄え重厚な線で紙面を圧した秀作。
市川 章子
流れるような連綿線と王羲之の空間処理を範とした作。
【選出所感】
一行目が単体、二行目は二字とも複体という珍しい配列の字面でした。一行目で字幅を広く書けたか、もしくは、インパクトのある墨使いをしたかが、作品の良否に関わってきます。特に隷書と楷書で出品された方の中に、二行目に目が行ってしまう作品が多かったように思われます。
師範の方は、安定した作品が多かったのはいつも通りなのですが、四・五段以上の方が着実に力をつけてきたのが伝わってきます。正式書体の方は、起筆・収筆に無理なと言いますか、過剰な力の入れ方がなくなっています。行書草書の方は、滑らかな運筆に心掛けていらっしゃるように思われます。このように成長している時期だと感じましたら、墨をより一層毛先に含ませるようにすると良いですね。悩んでいる時は、どうしても考え考え運筆をしますから、毛先から墨が流れ紙面がにじんでしまいます。成長している時や、調子のよい時は大胆に墨を入れると、作品が二倍三倍に良くなります。

[岡田明洋]

漢字規定部(特級以下)

金井 万由美
この級でこれだけの気脈の意を表現したことに感心しました。
杉山 麻友美
分間の統一に留意した書き振りが良い。この調子です。
【選出所感】
この字面は、上二字が複体、下二字が単体の字面です。上二字が単体、下二字が複体のように、下が重くなるよりは、書きやすいのですが、やはり、楽な配字とは言えません。選文に際し、四季の美しさを表現できているかをまず考えますが、語句の意味だけでなく、構成上の画数の多寡や、単体複体の並び順を考える必要があるようです。
唐代楷書は、九成宮醴泉銘を寄り処にして集字して書きましたが、皆さんの出書作も、これを元にお書きになってくれた方が主でした。そしてその出来具合も難しい配字であったのに、しっかりとお書きになっていました。紙面が縦長の字でスックと立っていた点と起筆が10時半の角度で美しく入っていた点が良かったのだと思います。今後の反省点として、起筆と収筆の角度が同じになると更に美しい線になると思います。簡単に言いますと、起筆は三角なのに、収筆は丸い形でおわることはないようにしましょう。横線で白にお団子が出来るのは、薬指の用い方が不足しているからです。

[岡田明洋]

条幅部

長野 天暁
墨の比重が強くなり、余白の美が際立った力作。
鈴木 藍泉
徐青藤の横物に挑戦!更に疎密をつけて行間を生かそう。
内海 理名
里耶秦簡をモチーフにしての作。蔵鋒の妙、円運動よし。
小田 一洗
北魏書を追求している姿勢が良い。張猛龍を入れよう。
【選出所感】
ワンシーズンに一枚は条幅作品を仕上げるつもりで書きましょう。と檄を飛ばしましたが、少ない出品数となりました。年末の忙しさということもあるのでしょうが、残念なことです。
以下、過去2年間の条幅範書を分類してみました。
(A)1・2・3月、7・8・9月は正式書体
(B)4・5・6月、10・11・12月は略式書体
奇数月は五言絶句、偶数月は七言二句
5月と10月は昇段試験月
(A)では、隷書3点、唐楷3点、北魏2点、智永風2点、随墓誌銘1点、秦隷風1点
(B)では、行書6点(ほとんど米芾調)、草隷1点、草書1点
5月昇段試験、北魏2点、唐楷2点、行書2点、隷書1点、秦隷風1点
10月昇段試験、北魏2点、唐楷1点、行書1点、行草書1点、草書1点、秦隷風1点、隷書1点
関心のある書体の範書をみてみてください。
そして自分探しをしてみましょう。

[岡田明洋]

臨書部

藤田 紫雲
素直で伸びやかな線が良い。少し重心の位置を考えよう。
市川 章子
繊細な起筆と滑らかな送筆。共に趙孟頫の特徴です。
【選出所感】
最後の趙孟頫の臨書作品でしたが、満足のいく出品群でした。前回の選出所感の文章の中の「王羲之の書は八面露鋒の筆法だと言われていますから、あらゆる面を用いている様に思われますが、私などはやや筆管(軸)を右の方に倒しながら用いています。」と記しましたが、どうもそのことを実践してくれたのでしょうか。軽妙な側筆を会得できた方が多くいるように思われました。
王羲之の書も、いわゆる頭でっかちで重心が低い造形ですが、趙孟頫の書も、王羲之崇拝者の書ですから、とても重心が低くとられています。文字の重心を把握する力をつけるといいですね。趙孟頫と王羲之とで、大きく異なるのは、点の存在感です。なぜか、趙孟頫は、点が弱い点になってしまうのです。この点が著しく異なります。余談ですが、王羲之の点は右サイドに寄って打ち出しているのも気になる所です。

[岡田明洋]

随意部

長野 青蘭
古隷の結体の面白さ、その中にある率意も巧みに表現。
神戸 玉葉
里耶秦簡の臨書。肉筆文字から運筆のリズムを学ぼう。
小野 幸穂
皇甫誕碑の臨書。更に線の厳峻さを追求しましょう。
宮﨑 蓮㳺
これも皇甫誕碑。肥痩の変化を加味しよう。
【選出所感】
先月の所感で、私の好みのようなものを紹介しましたが、好みであるから選り好みをしているわけではありません。
今後の書の魅力を考えるとき、20世紀そして21世紀に主に中国で発掘された、また発掘されるであろう資料から、今まで点であった文字資料が、ラインとして展開されるのではないかということです。それは、前漢の竹簡・木牘に書かれたものであり、秦以前のそれであるのです。秦隷とは、秦の始皇帝が中国統一を果たし、文字統一を成した泰山刻石、驛山刻石に記された「小篆」を捷書きしたものと言われていましたが、始皇帝が天下統一をする60年前に「天水秦簡」と言われる篆書の捷書きの書体があったのです。戦後書道会を牽引されてきた西川寧先生、青山杉雨先生などの諸先生が見ることのできなかった資料が、印刷物として出版物として私たちの目の前に提示されているのです。なんと喜ばしいことでしょうか。ここに書道の未来があるのだと思います。

[岡田明洋]

実用書部

藤田 紫雲
安定した運筆と豊かな懐の広さが心地よい。
萩尾 惺雲
普段の書き振りより、字幅が広がった。この意識です。
【選出所感】
ただ私の書いたペン字を真似するだけではなく、先ずはご自分で、活字をご覧になって書いてみましょう。パソコンやスマホなどで学習する最大の利点だと思います。横書きされた和歌をとにかくご自分の脳内文字で書いてみる。そのことによって、造形を考えるようになるのです。そして、その後に私の書いた範書と見比べてみる。どんな点を比較するのかと言いますと、
①まずは文字の大きさがどうなのか。範書より大?小?縦長?それとも横広?雑巾の固絞りはいけませんね。やはり字幅の広・狭がなければなりません。
②力の入れ具合はどうでしょうか。私より太い方は力の入れすぎです。特に人差し指で軸に強い力を入れているのかもしれません。反対に細い方は、力の入れ方が足りないか、軸が立ちすぎているのです。ペン先の開閉が意識されるまでなるべくゆっくりと書いてみましょう。
③文字群(一文節)ごとの文字の傾きを見ましょう。当然、左傾になることが必要になります。一字ごとも左傾を心掛けることが大切です。
こんな点を自己チェックしてみましょう。

[岡田明洋]