2022年11月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋 沖村春岑

漢字規定部(師範合格者)

※作品は押すと単体で表示されます

竹本 楓
隋の墓誌銘の結体と用筆法を真摯に追究した作。
大村 紅仁乃
しなやかな線質を生かし、伸びやかに表現した秀作。
市川 章子
やや細身ながら、気脈の大切さに留意した。更に肥痩の変化を求めたい。
竹本 聖
三体を表現する難しさを理解したと思う。北魏楷書に磨きをかけよ!

漢字規定部(昇段試験合格者)

増田 文子
三折法を守り、規則正しい書き振りとした。佳作。
飯塚 暁美
滑らかな運筆。落ち着いた書き方が良い。
土切 綾野
墨の用い方に優れた作。結体の美しさも表現した。
河合 紀子
細身ながら厳しい線質で空間に負けていない。ゆっくりと太い線を加味しよう。
川原 礼子
素直な運筆、安定した造型。この調子で書こう!
大場 愛
気持ちの入った草書。特に二行目の動きが良い。
植原 直子
円運動を駆使して、傅山のような柔和な線を表現しました。
金井 万由美
粘りのある線。呼吸の長さも見応えがあります。
【選出所感】
四季の書も四回目の昇段昇級試験です。四名の方がめでたく師範に合格されました。前回の課題をしっかりとクリアされて、充実した作品でした。前回苦汁をなめた方には、それぞれ、どの課題のどのような点がまずかったのかを文章でお渡ししてあります。行草の場合、スピードの変化をつけることと、墨量の多寡をはっきりさせることで、見違えるほど作品が変わります。その点、楷書と隷書は画一性が求められますので、それほど大胆に変化を狙うことができません。楷書では、右上がりの統一、起筆、送筆、収筆のリズムを手に入れることが大切です。隷書は水平・垂直・扁平を守り、波勢、波磔を表現できたかが鍵となります。
残念ながら、今回不合格となったり、作品が間に合わなかったりした方は、次回のために克服すべき課題に対して、比重をかけてお稽古をしてください。
実は初段以上の方でも積極的に受験していただければ、二階級昇級できたのでは、という方も何人かいらっしゃいます。多分、条幅を書いていないから、尻込みされているのでしょう。今回の課題を合格者の方と見比べながら、試しに条幅を書いてみてください。初めの一歩を踏み出してください。

漢字規定部(月例課題)

藤田 紫雲
草隷に思いを馳せ、雄大な表現を試みた作。
天野 恵
草書と言えども、安定感を得た秀作。気脈よし。
長野 天暁
芯の通った行書。左傾を上手に用いた点が良い。
永嶋 妙漣
いつもに比べるとやや迫力不足か。気満の精神を。

条幅部

山田 淥苑
重厚なる線に、温和な性質を加味した秀作。
内海 理名
馬王堆帛書を源流にして、伸びやかな秦隷とした。
鈴木 藍泉
徐文長の闊達とした振幅の長さを巧みに表現した。
萩尾 惺雲
賀蘭汗造像記を雄渾に記した。墨と紙との相性を考えたい。
【選出所感】
藍泉さん、善三郎さん、淥苑さん、一洗さん、芳竹さん、友美さん、理名さんが掲載の候補に残りました。紙一重という所だったのでしょう。どの書体で書いても、最初の二文字の「鶴聲」が大きくなりすぎて、単体の「更高」が貧弱になってしまうという欠点が目立ちました。この中で北魏楷書は、淥苑さん一人だけでしたが、これなども、画数の多い「鶴聲」を小さく書くことがむずかしかったからなのでしょう。唐代楷書4点がしのぎを削った格好となりました。
条幅は掲載された徐青藤や、賀蘭汗造像記のほかに、米芾や、智永千字文など「四季の書」で取り扱った古典を書いてくれた方が何人かいました。配信してまだ二年ですが、比較的ポピュラーな古典を紹介しています。難易度が上がる前に、オーソドックスな古典で目勉強、手勉強をされるようにしましょう。
いきなり半切に書くのではなく、半紙に鉛筆で骨格をデッサンしたあと、概形も描いてみて、全体の造型が古典と似ているかをチェックしても良いですね。条幅の紙の値段も上がっています、紙代を節約する方法も皆さんで考え、実践していきましょう。

実用書部

内海 理名
いままでより、抑揚の変化に富んだペン字とした。佳なり。
松葉 圭子
やや筆圧が勝りすぎたか。人差し指の力を軽くすべし!
【昇段試験対策】
私が一番最初に書道塾を開いたとき、三人のお子さんが入塾してくれました。その中の一人は、大人になるまでお習字を続けてくれて、競書雑誌でも師範になった生徒です。子育てが忙しく、書道から遠ざかっていましたが、何十年かぶりに舞い戻ってきてくれました。
その子が子供の時に、あまり鉛筆の持ち方を厳しく言わなかったものですから、力の入れ方、ペンの立て方を今一つマスターされていませんでした。そして私に脳内文字という概念もなく指導していたものですから、字形に癖が残っていました。そのような意味で、実用書に対して再認識をしています。
まずは正しい姿勢です。背筋を伸ばして、おへその下の丹田に力を込めて、両肩は、水平になるようにして、自然な姿で正座をしましょう。そして右肩の先に手首を置いて、手首は軽く紙に擦るようにします。ペン先は60度くらい。軸は、人差し指の第二関節に触るように。親指と人差し指の間まで下がると、鳥のクチバシのようになって、無駄な力が入ってしまいます。
ペン先のお腹がやや左手の方を向きます。このようにすると、ペン先が開きすぎることがなくなります。人差し指の力を入れすぎると太い線になりすぎてしまいます。反対にペン軸が立ちすぎると太い線が表現できないので、硬い感じのするペン字になってしまいます。ペン先の圧力に変化をつけて、線の太い細いを表現しましょう。