2026年10月 お手本【一般 条幅部・随意部・実用書部】

条幅A

「謝朓詩」
夕殿珠簾を下ろす 流るる蛍は飛びて復た息う
長袍羅衣を縫う 君を思いて此に何で極まらん

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【手本解説】
詩の内容は、かつて愛情を頂いた天子のことを思い、深い悲しみにおおわれた詩ですが、字句的には、画数の多寡、見映えのする漢字が適当に配置されている点で、これほど書作に向いた詩句はないと思います。
北魏楷書は、二行目の夜縫羅でしょうね。ここが余り大きすぎないように。しかし、存在感をしっかりと表現したい箇所です。下部の息と極も、小粒ながらも上部の文字をきちんと受け止めて下さい。
行書は、見映えのする文字に全体をまかせ、気負うことなく淡々と書き進めた感じでしょうか。卒意の書を目指して筆を進めてみて下さい。
草書は、字面に踊らされているような書作でした。董其昌は懐素を習っているのは確かなことですし、私も以前から自叙帖なども臨書しているものですから、自由きままな作品となってしまったようです。
隷書はいつものように木簡です。文字が良いので、横画の伸びを大切に扁平さをしっかりと表現しましょう。

[岡田明洋]

条幅B

「田紫芝」
乱鴉背に斜陽を著けて去り、
寒雁秋色を帯び将て来る

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【手本解説】
この詩も字面的にみて、亂・鴉・斜・陽・寒・雁・帯・将など一字書でも書けるような美しい構造の漢字がちりばめられている七言絶句の詩です。
乱の字は、唐楷では旧字体の亂しか字例がありませんでしたが、隋代のものに乱がありましたので、字形がやや扁平な隋の墓誌銘的な書例としました。骨格の強さを意識してお書き下さい。
行書は雁のみ草書を用い、あとの行書は墨の潤渇に意を用いながら伸びやかな線で運筆しようと心掛けました。もちろん、ベースとなっているのは米芾の行書です。
草書は、五言律詩ほど、線を遊ばせてはいませんが、やはり、普段意識している懐素の自叙帖のような自由な書き振りとなっています。この草書の方は行書よりも少し落ち着いて書いて下さい。
隷書は、木簡から調べていますが紙面の関係でやや縦長の構造をとりました。それを補う横線の伸びを期待しています。

[岡田明洋]

随意部

10月31日締めは、昇段試験のため随意部手本はありません。

実用書部

鳴戸阿南吉野川市
ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雪 信綱

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【手本解説】
徳島の市名に入ります。偏旁の漢字が三つ、あとは単体の漢字ですので、中心線を生かして書けば、比較的容易にまとまる課題かと思います。以前より皆さんの文字の小筆の軸の立ち具合が改善されたのでしょう。線の切れが出ていますので、この調子でお書き下さい。
以前に、ペン字に安定感が出ていますと記しましたが、市名も和歌も大変上達され、どの段の方が写真版になっても不思議ではありません。この調子で切磋琢磨して下さい。
和歌は今回、漢字が多い為、字粒がやや大き目になったので、懐の広さ、字間をつめることに注意しながら書き進めて下さい。それでも二行目下に空間が出来てしまいましたので、作歌 佐々木信綱の信綱を入れてみました。紙面をまとめる為の一工夫です。
佐々木信綱は、1872年生。明治から昭和にかけて活躍した歌人。万葉集研究の第一人者であり、近代短歌の巨匠。唱歌“夏は来ぬ”を作詞しました。1963没。

[岡田明洋]