2022年10月 お手本【一般 臨書部】

条幅臨書

「臨 関中本千字文」
曰く厳と敬。孝は当に力を竭くすべし、忠は則ち命を尽くせ。
深きに臨んで薄きを履むごとく夙に興温清せよ

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半紙臨書

「臨 趙孟頫」
戞然として長鳴し、余が(舟を)掠めて…

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趙孟頫の書は、宋の皇族の出身ですから、漢民族としてのプライドが高かったのでしょう。平明な書とも評されていましたが、余りにゆったりとした文字の構えから、私などは横広の結体のように思いこんでいました。「戞然長鳴掠余…」と再度原本と詳細に見比べてみたところ、扁平に臨書しすぎたと反省しています。穂先の効いた素直な線で側筆を巧みに用いた「戞」。上部の左右の空間をいかしています。やや重みのあるパーツを「戈」が細い足で支えているような感じです。「然」は草書体。なんの衒い(てらい)もない懐の広さにこちらも心穏やかになります。「然」が草書体であるのに静を感じさせる書き方に対し、「長」の穂先を紙面にクッと食い入らせる激しい左右への折り返しには、身が引き締まる感覚が沸き起こります。「鳴」は、「長」とは真逆の側筆の左右への折り返し、そして重厚な縦画の構え。「掠」は幅広と重心の低さが、扁平な結体とともに安定感を生みます。「余」の左右の払いの鋭さは鍛えた剣のような厳しさを表現し、続く「未」を一筆で書く穂先の弾力に驚嘆するばかりです。