2026年02月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋

漢字規定部(初段以上)

※作品は押すと単体で表示されます

和田 平吉
墨を含ませた穂先を俯仰法を用いて伸びやかな作品とした。
長野 青蘭
安定感のある横画と分間の正確さを表現した隷書作品です。
鈴木 藍泉
呉昌碩の中鋒のタッチを生かし、剛健な線での行書作。
藤田 紫雲
楚帛書をベースにした力作。新しい表現への挑戦です。
増田 文子
規範性の高い楷書作品。更に起筆の強さを追及しよう。
片瀬 仁美
豊かな線質、懐広い結体が紙面を彩っている。
片村 正子
折り返しの蔵鋒を巧みに用い、気脈の長い行書作品とした。
遠藤 衣月
墨継ぎの有効性を把握し、紙面上の立体感を表現した。
【選出所感】
先月の選出所感では、準師範から三段くらいの方は、年の瀬でお忙しかった為か、紙面がざわついた感じがしましたと記しました。今月は、元に戻ったといいますか、墨もしっかり入って落ち着いた作品が多くあったように思われます。やはり時節により心持ちが随分と変わるものだと痛感しました。
今月、初段以上の方で気になるのが、落款です。つまり名前ですね。多くの方が、本文の文字の大きさに比べ、落款が大きすぎました。大きく記すと必然的に、位置が下がってしまい、一行目の下のラインより下に書いてしまいます。字数の違いもあるので何センチ四方とは言いませんが、一行目の三字目の重心と見比べながら、位置と大きさを決めてください。まだ、草書作品の時に行書で落款を入れている方も目にします。行書の時の楷書っぽい落款も不釣り合いですね。
先月頃から趙之謙や楚帛書をモチーフにして出書してくれる方がおり嬉しく思います。新しい書体に挑戦してくれているのだなと嬉しく思います。

[岡田明洋]

漢字規定部(特級以下)

高橋 美月
穂先から墨が垂れる様子を確認しながら呼吸の長い作品とした。
地頭所 和子
露鋒の度合が多いものの、丁寧な運筆が練度の高い作品とした。
【選出所感】
二か月前に、「何を書いて良いか迷ったら、楷書にしてください」と述べましたが、今月も楷書で出品が多かったようです。しばらくは、この姿勢で良いと思います。
初心者の方は、まずは、形の整った端整な文字を書く技術を求めていらっしゃるのだと思います。つまり書いた文字の形や構えの美しさを追究しているのでしょう。楷書の萌芽は、魏・呉・蜀の三国の頃と見なされ、晋、南北朝を経て、隋唐で完成されましたが、それ以後、新しい書体は、生まれていませんので、文字の完成形と言っても良いでしょう。小学校で習う文字は、この唐代楷書がベースになっているのです。
小学校の書写の教科書に、①毛先はいつも左ななめ上に向ける②筆管を立てて持つというように書かれていますが、まずは、毛先がボサボサにならないように、墨池の三日月形をしたへりや硯の陸で、毛先を整えた運筆を心掛けましょう。

[岡田明洋]

条幅部

長野 天暁
北魏楷書をベースに紙面一杯、圧倒されるスケール大佳。
片村 正子
やや小粒な行書作だが、余白に変化を持たせた流麗な作品。
遠藤 衣月
王覚斯の臨書、墨痕鮮やか。若さ溢れる連綿行書とした。
坂口 多美子
とてもおしゃれな北魏楷書。毛筆の穂先を用いた感が良い。
【選出所感】
馬年は、飛躍の年だと言われています。「龍驤麟振」とは龍が空へ勢いよく昇り、麒麟が勇ましく振るう様をさし、威勢が非常に盛んな状態を表す四字熟語です。皆さんの一年が将にそのような年になれば良いと願って筆を執りました。
範書は、細い線を用いても、打楽器的な打ち込みの強さをも入れ、潤渇の変化に富んだ線の抑揚の変化をも表したつもりでいます。天暁さんの北魏楷書の雄渾な書作の他、隷書では、古樸な古隷的な古雅ある作品を何点か目にしました。八分隷書を用いると、やはり、半切に五文字が具合が良いようです。四文字だと字間が広すぎて、紙面の充実感が今一歩表現されないようです。
範書を拠り所にした行書が一番多くありましたが、普段あまり書き慣れない半切四文字という課題に、残念ながら筆力が不足していたようです。蔵鋒的な起筆を多用しないと、なよなよとした線になってしまいます。
一年に一回、新年にむけての抱負を四字句で思い切り楽しみながら、表現してみましょう。

[岡田明洋]

臨書部

内海 理名
やや小粒な行書作だが、余白に変化を持たせた流麗な作品。
奥田 友美
出書中、一番筆力の強さを感じさせる作品とした。
【選出所感】
米芾の作品の中でも、この李太師帖は、尺牘(手紙)の為に感情が込められ豊麗な線で表現されています。
行書の作品を書く時には、なるべく右サイドに壁を作るようにして、左サイドを開放させたり、収縮させて変化を作ると良いと言われています。李の四画目、子の最終画、太の一画目、師の最後の縦画が一直線で結ばれています。これを壁といいます。李を右側に位置して、どんどんと左サイドを広げています。二行目の収・晋・俗も同じように右サイドに壁があり、左サイドで字幅を広げていきます。いわゆる団子の串差しのようにならないようにしたいものです。
晋の一画目を右から左へ払いのように書いている方が何人かいました。私の範書がそのように見えてしまったのですね。申し訳ありません。怪しいと思ったら字典で確認して頂けると良いですね。

[岡田明洋]

随意部

小柳 奈摘
西狭頌の臨書、字画に判然としない字もあるが、力強くまとめた。
小田 一洗
北魏墓誌銘の臨書。キリっとした鋭利な入画が素晴らしい。
齊藤 睦
漢碑中一番端正な八分隷である曹全碑を美しくまとめた。
市川 章子
馬振拝造臓記の臨書。安定した造型だが収筆更に力強く。
【選出所感】
先般の轟友会の勉強会において、青山杉雨先生が『書道史の中で王羲之がとりもなおさず一番の書人であるのは言うまでもないが、あと三人ということになれば、米芾・王鐸・趙之謙ということになる』とおっしゃっていた。というお話がありました。 唐の太宗皇帝は、王羲之の書に心酔し、自身も王羲之の書を学び、最も愛した蘭亭序は、お墓(昭陵)の中に殉葬をさせました。このようなエピソードもあり、王羲之は書聖と称され、書道史上唯一無二の存在と言ってよいと思います。 米芾は、「四季の書」でも再々お話ししています。米芾は、書道講座・行書編126ページ、青山杉雨先生をして『あまりうまいと人は必ずしも好きになれないもので、私もなんとはなしのコンプレックスをこの米元章の書を見ると感ずることがある』と感想を述べられている。王羲之の書を鑑定し、書道史上最高のテクニシャンと呼ばれている米芾です。しっかりと臨書部で学んでいってください。

[岡田明洋]

実用書部

川原 玲香
線の切れ味抜群のペン字。細字は縦画の安定を求む。
小野 幸穂
求心性のあるペン字。あなたも縦画・懸針をしっかりと。
【選出所感】
「那・川・市」に懸針と呼ばれるぬき出す線がありますが、この線が少しひ弱に感じられました。45度の入筆で充分に毛先をためてから、線の中心を毛先が通るつもりでゆっくりとぬきましょう。あまり力を抜きすぎると失敗のもととなります。
縦画は基本、一本の線で下部が太くなるようなことはありません。「珂」の二画目、「川」の二画目のような鉄柱と呼ばれる止めの線でも下部肥大はやめましょう。「那・市・高・室」には転折があります。右肩の所で横画と縦画とが連接する所です。この箇所を一筆でまげようとしないで、一度筆を離してから縦画やらハネ(室のウカンムリの左肩)につなげると良いでしょう。むしろ横線は、だんだんと線を細くしてから二画で書くつもりでやります。
和歌の一行目と二行目の釣り合いはとても改善されている様に思います。

[岡田明洋]