2026年01月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋

漢字規定部(初段以上)

※作品は押すと単体で表示されます

鈴木 藍泉
智永の真書をおもわせる柔和な楷書作品とした。
小野 幸穂
横画の起筆に冴えが出て来た。そのまま送筆部の充実を!
中山 櫻徑
緩急の変化に留意して、立体的でオシャレな行草とした。
平垣 雅敏
起筆がやや円筆となった。方筆を安定したものにしよう。
田村 奈穂
まだ左傾を大胆に用いても良いが、王羲之への取り組み方大いに佳!
生田 美穂
師風を追っての秀作。何字か一筆で書くつもりで書こう!
松久保 美幸
墨入れは意識しているが、もっと大胆に渇筆を用いよう。
深谷 志歩
隷書の構えに意を用いたが、樹は右上りに見えます。
【選出所感】
今回も嫌な課題で申し訳ありませんでした。「クサカンムリが二つ、木が三本」。わずか五文字の中にこれだけ同じパーツが含まれていては、面白く書けませんね。それでも写真版になられた方は、各自が工夫されて、いつもより優れた作品が選出されました。
特に師範の方は力が拮抗していました。妙感さん・青蘭さん、紫雲さん・櫻徑さん・一洗さん・恵さんは紙一重と言ってよいでしょう。ただ、準師範から三段位の方は、少し肩に力が入った書き方といいますか、紙面がざわついた感じがしました。年の瀬で、お忙しかった為でもありましょうが、「忙中閑あり」の心境であってほしいものですね。一本の線を落ち着いて書く時の心持ちは、なかなか禅的な感じがして良いのかもしれません。私はこの頃、一字の中に一本は本当にゆっくり書いた線を用いようと心掛けています。その、緩なる線をどこにしようか模索するのも又、楽しみとなりつつあります。

[岡田明洋]

漢字規定部(特級以下)

宮﨑 紀久恵
起筆・収筆に充分な意識を用いました。払いも立派です。
小松 英里
横画での筆の立て方が上手で、筆圧の変化を生みました。
【選出所感】
前回「何を書いて良いのか迷ったら、楷書にして下さい」と述べました。その言葉を皆さんが受け入れてくれたのか、今回は、ほとんどが唐代楷書風でした。先月は二行目が画数が多い文字が配置されていましたが、今月は、上部の龍鶴に対し、下部に吹語と、比較的画数の少ない文字が置かれていました。必然的に上部が大きすぎになってしまう傾向にあったようです。
みなさんの作品の中で一番気になったのは、線の乱れです。一つは、お団子を作ってしまう方、縦でも横画でも力の入れすぎでしょうね。毛先の弾力を生かすのではなく、筆の腹の部分を抑えつけてしまっています。YouTubeでも、楷書の書き方は沢山流れているのでご覧になってみたらどうでしょう。
2つ目は、ギザギザ・ガサガサで終ってしまう方。墨の含ませ分が不足しているのと、収筆ですぐに筆をあげてしまう為にこのようになるのです。1・2と数えてから静かに毛先を紙面から離してみて下さい。

[岡田明洋]

条幅部

永嶋 妙漣
密度のある横画の分間が見事。更に筆の開きを加味したい。
内海 理名
謙慎展の原稿段階の書。自分の目で写真版から発展を!!
田村 奈穂
規定課題より、左傾を用いて流れを表出した。二行目大佳!
深谷 志歩
半切に一四文字の隷書は難しいがよく書いた。猶・有に墨を!
【選出所感】
新春の冒頭に「龍驤麟振(りゅうじょうりんしん)」と筆を執りました。「龍が勢いよく天に昇り、麒麟が勇み立つように、勢いが常に盛んな様子」を表す語句です。
通常は、奇数月は五言絶句、偶数月は七言二句で範書を書いていますが、2023年1月に「万歳亀延年(ばんざいきえんねん) いつまでも長生きして、健康と幸せな人生を送ろう」という五字句を書いてからは、新年には、佳(よ)き語句を選んで気を奮い立たせております。
大きな条幅という大きな紙面に一年の思いを込めて書いて頂ければと思います。
私事ですが、静岡県の委嘱作家展に「蘇鐵(そてつ)」と書いて出品しました。ソテツの木は、根元に釘を打つと蘇生することに由来し、枯れそうになった時に釘を打つと蘇生するとのことです。書は、ただ文字を書くだけではなく、思いを紙上に表現するがゆえに『心画』と言うのです。是非是非思いを燃焼させて頂きたいと思います。

[岡田明洋]

臨書部

天野 恵
臨書作と言えども、古典の筆意を再現した優秀作。
藤田 紫雲
肥瘦の変化に留意し宋人の個性的書き振りを得た。
【選出所感】
蘭亭序も先月の課題で最後となりました。字面が良かった為でしょうか、それとも最後だということで気合いが入ったのでしょうか、力作が寄せられました。
風の虫の位置取り、和の口の形、暢の伸びのなさ、仰の均等な三分割など気になる所が原帖には沢山ありましたが、皆さんの作品は、行書を楽しく書いている様に感じました。なんとなく米芾が書いたのかなと思わせるような雰囲気もあって嬉しく思います。
落款の臨という字が、範書にも書かれていないので、色々な”臨”がありました。蘭亭序の”臨”は、偏が行書で、旁が草書。晋祠銘もこれに準じています。空海の風信帖の臨は草書によります。臣が縦線2本。米芾もこれによります。王羲之の”臨”は、縦線一本。又、十七帖は、ゴンベンの草書の崩しのような形のもの、サンズイの続け書きのようなものもあります。誤字だと思われないように、皆さんも字典で良く調べてお書きになって下さい。

[岡田明洋]

随意部

藤田 紫雲
楚帛書の臨書作。筆先の鋭利なタッチを表現した。
和田 平吉
張猛龍碑。左手法を用いたが、もっと雄大さを表現しよう。
市川 章子
範書をご覧になっての臨書。やはり張猛龍碑をお勧めします。
遠藤 衣月
王羲之喪乱帖の臨書。側筆を巧みに用いた。二行目大佳!
【選出所感】
全体的な平均点から言いますと、漢字規定部の作品より評価は高いと思いますが、あまりに出品点数が少ないのは気になります。と、いうよりも残念に思います。
この部門こそ自分探しにほかなりません。自分の好みの古典作品を見つけ、この臨書を通じて、その古典の心と感情を汲み取り、その表現上の技法を自分のものにすることが出来るからです。古典は、何千年の風雪に耐えて、永遠に華開いている名品です。その中の一つの点、一本の線をもって、一字を再現させることが出来たら本当に嬉しいことだと思います。
私が一番関心を持っている秦隷という書き振り。その中に表現されている左手的な線を見つけ出した時は、ウォーリーを探せ的な喜びを体験することが出来ます。「おおっ、この線のここに左手線がかくれていたか!やはり、この線のエネルギーは凄いもんだな!」と一人喜んでいます。このような感動をみなさんと共有したいものです。

[岡田明洋]

実用書部

天野 恵
ペン字に懐の広さがあり佳。細筆の仮名を勉強しましょう。
生田 美穂
慣れて来たら、毛筆を用いてみましょう。線がしぼれます。
【選出所感】
やはり、中学生と比較しますとペン字には安定感があります。それでも、二タイプに分れるようですので、中学生硬筆の選出所感をご覧になって注意するところは改善して頂けると良いですね。
どうも私の範書が悪いようで、和歌の二行目の振幅が狭く感じます。一行目は偏旁の字、必然的に懐を広く取ることで字幅が生まれます。それに対して二行目は、単体ばかりであること、そして、平仮名が五文字続くことでどうしても細目の行立てになってしまいます。この点を私自身も改めようとは思いますが、私の書いたものを絶対視しないで、各自がめいめい工夫して頂ければと思います。
細字も朝以外すべて単体で、しかも、平仮名が入っているということで、密度に欠けた行となってしまったようです。又、仮名の曲線も今一つ上手に表現出来なかったようです。

[岡田明洋]