選者選評 岡田明洋
漢字規定部(初段以上)
※作品は押すと単体で表示されます
【昇段試験対策】
北海道大雪山国立公園の層雲峡の紅葉を見ようと、10月1日の審査後夜行バスで羽田に、9時には釧路についての3泊4日の旅行をしました。今年は猛暑のおかげで、まだ十分には色づいていませんでしたが、まさに聳える紅葉の様子は窺えました。
左上から、唐代楷書調ですが、集字してみても、九成宮の「千」、皇甫誕碑の「葉」しか欧陽詢から見つけることはできませんから、初唐楷書の伸びやかさは損なわないようにと筆を執りました。横画は、小学六年生の対策をお読みください。
行書は、米芾中に「村」以外の文字はすべてありました。米芾は王羲之の流れを汲みますから、上部をゆったりと書けば雰囲気は出ると思います。
草書は、王鐸から集字することが出来ましたが、掲載された手本は書いたときに思った以上に細線を多用していたようです。もう少し平易な書き方でも良かったでしょう。
北魏楷書は範例も沢山ありましたし、出来上がりも岩とともに映える錦の屏風のような書き振りが出来たかと思います。
北海道大雪山国立公園の層雲峡の紅葉を見ようと、10月1日の審査後夜行バスで羽田に、9時には釧路についての3泊4日の旅行をしました。今年は猛暑のおかげで、まだ十分には色づいていませんでしたが、まさに聳える紅葉の様子は窺えました。
左上から、唐代楷書調ですが、集字してみても、九成宮の「千」、皇甫誕碑の「葉」しか欧陽詢から見つけることはできませんから、初唐楷書の伸びやかさは損なわないようにと筆を執りました。横画は、小学六年生の対策をお読みください。
行書は、米芾中に「村」以外の文字はすべてありました。米芾は王羲之の流れを汲みますから、上部をゆったりと書けば雰囲気は出ると思います。
草書は、王鐸から集字することが出来ましたが、掲載された手本は書いたときに思った以上に細線を多用していたようです。もう少し平易な書き方でも良かったでしょう。
北魏楷書は範例も沢山ありましたし、出来上がりも岩とともに映える錦の屏風のような書き振りが出来たかと思います。
[岡田明洋]
漢字規定部(特級以下)
【昇段試験対策】
菊の持っている凛とした姿を四体で書き分けたかったのですが。
智永の真書や、褚遂良の雁塔聖教序のような細い線でも張りのある様式を求めての範書です。線に抑揚の変化をつけて、楷書の中にも行意を入れるようなつもりでお書きいただいたらよいと思います。
行書四言句もやはり、米芾からのものを多く用いています。したがって左傾が目立ちます。文字の右上に三角形の空間が判然とすれば、文字中の重心の移動が理解されると思います。條の旁など、どんどん右下に重心が移っているのがおわかりでしょう。
草書は早書きすることなく、ゆったりと懐の広いものを書きたかっただけです。四文字ですが、特定の古典から集字することが出来なかった分、自分らしく書けたかと思います。
草隷調”木簡字典”は居延漢簡からのものです。全体的にもっと横画を伸びやかにして扁平の体にすればよかったと反省しています。特に條の字はいけませんね。
菊の持っている凛とした姿を四体で書き分けたかったのですが。
智永の真書や、褚遂良の雁塔聖教序のような細い線でも張りのある様式を求めての範書です。線に抑揚の変化をつけて、楷書の中にも行意を入れるようなつもりでお書きいただいたらよいと思います。
行書四言句もやはり、米芾からのものを多く用いています。したがって左傾が目立ちます。文字の右上に三角形の空間が判然とすれば、文字中の重心の移動が理解されると思います。條の旁など、どんどん右下に重心が移っているのがおわかりでしょう。
草書は早書きすることなく、ゆったりと懐の広いものを書きたかっただけです。四文字ですが、特定の古典から集字することが出来なかった分、自分らしく書けたかと思います。
草隷調”木簡字典”は居延漢簡からのものです。全体的にもっと横画を伸びやかにして扁平の体にすればよかったと反省しています。特に條の字はいけませんね。
[岡田明洋]
条幅部
【昇段試験対策】
<条幅A>
左上から解説していきましょう。
以前にも言いましたように、縦長の構造を持つ初唐楷書風で半切に20文字入れるのは大変です。その点、北魏楷書はやや扁平ですから書きやすくなります。下部に画数の多い字が集まってくるので、やや下部の3字ずつを小さくしましょう。見映えさせなければならない位置が画数の少ない「花・何・太」ですので、これらをやや大きく墨を入れて書くことも大切です。とにかく、紙面に気が満ちる作品になることです。
行書は若干連綿線があるものの米芾の文字を集字したものですから左傾を上手に用いて流れを出すことを心掛けてください。又、「花・何・太」の箇所に墨量を多くし密度を高くするようにしてください。
草書は、疎密と潤渇の変化に留意しましょう。ただこの文言に束縛されることなく、西川寧先生が言われる「草書の一番基礎的なもの(中略)滑らかに、自然に」を心掛けて書作してください。
隷書は波勢のリズムを有します。直線的な硬質の線ではなく、波の姿のようなうねりを表現しましょう。横画は筆を右上から斜めに入れ、左上へひと巻きしてから右方向に送筆し、一うねり波を打たせて右上へ払いだすようにすることです。
<条幅B>
北魏楷書を集字しての書作です。「気満」つまり一画を充実させて書かなければなりません。その為には「逆入」を用います。ほとんど直下に直角に入れ、入れるとすぐに筆鋒を転換させ線の中心を毛先を広がらせるようにして逆押しで、送筆します。まずはこの運筆を心掛けてください。
行書は米芾に寄ります。すべて単体ですので、一字ごとのフォルムを左傾で統一させてもらいたいものです。十四文字で、含墨が少なく早書きをしますと、一字ごとの存在感が希薄になりますので、墨量は多めにしてください。「残・催・語・頻・蹄」など主張すべき字は主張させましょう。
三枚目のものは、米芾調を少しアレンジして、紙面を華やかに、流動的に表現したつもりです。文字の大小、連続性、省略性を工夫してみてください。適当に草書を挿入しても良いでしょう。
隷書で十四文字は難しいものです。扁平な結体にならないようにするために、武威漢簡の重厚な線、それによって生まれるやや正方形的な形で、紙面をまとめました。
字画が多く、華やかな紙面になると思いますので、張遷碑や鄧石如・趙之謙などの清朝の隷書を参考にしても良いですね。
<条幅A>
左上から解説していきましょう。
以前にも言いましたように、縦長の構造を持つ初唐楷書風で半切に20文字入れるのは大変です。その点、北魏楷書はやや扁平ですから書きやすくなります。下部に画数の多い字が集まってくるので、やや下部の3字ずつを小さくしましょう。見映えさせなければならない位置が画数の少ない「花・何・太」ですので、これらをやや大きく墨を入れて書くことも大切です。とにかく、紙面に気が満ちる作品になることです。
行書は若干連綿線があるものの米芾の文字を集字したものですから左傾を上手に用いて流れを出すことを心掛けてください。又、「花・何・太」の箇所に墨量を多くし密度を高くするようにしてください。
草書は、疎密と潤渇の変化に留意しましょう。ただこの文言に束縛されることなく、西川寧先生が言われる「草書の一番基礎的なもの(中略)滑らかに、自然に」を心掛けて書作してください。
隷書は波勢のリズムを有します。直線的な硬質の線ではなく、波の姿のようなうねりを表現しましょう。横画は筆を右上から斜めに入れ、左上へひと巻きしてから右方向に送筆し、一うねり波を打たせて右上へ払いだすようにすることです。
<条幅B>
北魏楷書を集字しての書作です。「気満」つまり一画を充実させて書かなければなりません。その為には「逆入」を用います。ほとんど直下に直角に入れ、入れるとすぐに筆鋒を転換させ線の中心を毛先を広がらせるようにして逆押しで、送筆します。まずはこの運筆を心掛けてください。
行書は米芾に寄ります。すべて単体ですので、一字ごとのフォルムを左傾で統一させてもらいたいものです。十四文字で、含墨が少なく早書きをしますと、一字ごとの存在感が希薄になりますので、墨量は多めにしてください。「残・催・語・頻・蹄」など主張すべき字は主張させましょう。
三枚目のものは、米芾調を少しアレンジして、紙面を華やかに、流動的に表現したつもりです。文字の大小、連続性、省略性を工夫してみてください。適当に草書を挿入しても良いでしょう。
隷書で十四文字は難しいものです。扁平な結体にならないようにするために、武威漢簡の重厚な線、それによって生まれるやや正方形的な形で、紙面をまとめました。
字画が多く、華やかな紙面になると思いますので、張遷碑や鄧石如・趙之謙などの清朝の隷書を参考にしても良いですね。
[岡田明洋]
臨書部
【昇段試験対策】
前回の「渕澄取映容止」を受けての「若思言辞安定」ですが、このあたりは、特に抑揚の変化が大きくダイナミックに筆が動いています。前回の「澄・容」や今回の「安・定」など上部は太い線を用い、かつ大きな空間を有しています。この辺りは王羲之系統の書き振りの特徴ですので、思い切り頭でっかちにしてみましょう。
六字の文字をいかに脈絡をつけて、行間を美しくとり、縦に流れるように臨書するのかがポイントです。
「若」上の「容止」をうけて文字群を成しているのでしょうか、墨量が少なめになっている様に思います。「思」で墨を入れ、「思言」と一文字群。「辞」リズミカルに点を打ってから、四つの右回転をしながら密と疎の変化を巧みに表現しています。「安」私の臨書したもの以上にアクロバット的な運筆をしていますが、これなども俯仰法を用いているから出来る技なのでしょう。「定」は側筆を用いて静かに書いています。
前回の「渕澄取映容止」を受けての「若思言辞安定」ですが、このあたりは、特に抑揚の変化が大きくダイナミックに筆が動いています。前回の「澄・容」や今回の「安・定」など上部は太い線を用い、かつ大きな空間を有しています。この辺りは王羲之系統の書き振りの特徴ですので、思い切り頭でっかちにしてみましょう。
六字の文字をいかに脈絡をつけて、行間を美しくとり、縦に流れるように臨書するのかがポイントです。
「若」上の「容止」をうけて文字群を成しているのでしょうか、墨量が少なめになっている様に思います。「思」で墨を入れ、「思言」と一文字群。「辞」リズミカルに点を打ってから、四つの右回転をしながら密と疎の変化を巧みに表現しています。「安」私の臨書したもの以上にアクロバット的な運筆をしていますが、これなども俯仰法を用いているから出来る技なのでしょう。「定」は側筆を用いて静かに書いています。
[岡田明洋]
随意部
【選出所感】
隋の墓誌銘の臨書に掲載版次点の作品が多くありました。
唐楷というと、欧陽詢、虞世南の双璧に加え、褚遂良というテクニシャンもいます。三者三様の個性もありますが、楷書という書体を完成させ、現在の書写の基本点画の原型を作りました。
楷書は、三折法(起筆・送筆・収筆)と右上がりという二要素をしっかり有して表現されている書体です。更に「横画・縦画・左払い・右払い・そり・曲がり・折れ・点・右上払い」という九種類の基本点画があります。
隋の墓誌銘は上の要素が実にいい加減なのです。起筆も45度だけでなく、色々な角度があり、時には筆を立てずにスッと入るようなところがあります。右上がりの統一もされていません。中心の縦線に対して、右サイドが広いのが唐楷ですが、隋の中には、左サイドの空間が広いものも良く見ます。唐の様式美が完成する以前のカオス的な表現が魅力なのかもしれません。
隋の墓誌銘の臨書に掲載版次点の作品が多くありました。
唐楷というと、欧陽詢、虞世南の双璧に加え、褚遂良というテクニシャンもいます。三者三様の個性もありますが、楷書という書体を完成させ、現在の書写の基本点画の原型を作りました。
楷書は、三折法(起筆・送筆・収筆)と右上がりという二要素をしっかり有して表現されている書体です。更に「横画・縦画・左払い・右払い・そり・曲がり・折れ・点・右上払い」という九種類の基本点画があります。
隋の墓誌銘は上の要素が実にいい加減なのです。起筆も45度だけでなく、色々な角度があり、時には筆を立てずにスッと入るようなところがあります。右上がりの統一もされていません。中心の縦線に対して、右サイドが広いのが唐楷ですが、隋の中には、左サイドの空間が広いものも良く見ます。唐の様式美が完成する以前のカオス的な表現が魅力なのかもしれません。
[岡田明洋]
実用書部
【昇段試験対策】
斎藤茂吉の句です。偏旁の字(秋・晴・胡・桃)は懐を広くゆったりと書いてください。仮名の部分がスッと下に流れてしまいますので、振幅をつけるためにも懐の広さは大切です。「楽」の横画を長くしたものもその効果を狙ってのことです。仮名のところで、四か所連綿を用いましたが、字群ごとに少しずつ右下に流しましょう。
都道府県名、ペン字は行書で書いていますが、皆さん筆圧を入れすぎている様に思われます。手のひらの中に卵を入れても、つぶさない位の握力でよいのですよ。左上のサイドは接筆しないで、風を中に入れるようなつもりで、明るく構築してください。
細字は毛筆を用いていますね。総じて早書きに思われます。横画の起筆は緩く、縦画は筆をたてて、すこし力を入れるつもりで書いて、細い太いの変化をつけましょう。「県」の七画目のハネは許容です。横画に接する縦画の起筆のところに三角形が生じるように書くのは、初唐楷書のスタイルです。このようなところも意識して書きましょう。
斎藤茂吉の句です。偏旁の字(秋・晴・胡・桃)は懐を広くゆったりと書いてください。仮名の部分がスッと下に流れてしまいますので、振幅をつけるためにも懐の広さは大切です。「楽」の横画を長くしたものもその効果を狙ってのことです。仮名のところで、四か所連綿を用いましたが、字群ごとに少しずつ右下に流しましょう。
都道府県名、ペン字は行書で書いていますが、皆さん筆圧を入れすぎている様に思われます。手のひらの中に卵を入れても、つぶさない位の握力でよいのですよ。左上のサイドは接筆しないで、風を中に入れるようなつもりで、明るく構築してください。
細字は毛筆を用いていますね。総じて早書きに思われます。横画の起筆は緩く、縦画は筆をたてて、すこし力を入れるつもりで書いて、細い太いの変化をつけましょう。「県」の七画目のハネは許容です。横画に接する縦画の起筆のところに三角形が生じるように書くのは、初唐楷書のスタイルです。このようなところも意識して書きましょう。
[岡田明洋]