選者選評 岡田明洋
漢字規定部(初段以上)
※作品は押すと単体で表示されます
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【選出所感】
隷書を親として派生した草書・行書・楷書ですので、 造形感覚を理解する上で、 是非隷書にも目を向けてほしい旨を先月号で書きましたが、 思った以上に、隷書が出品されていました。平吉さん・ 善三郎さんはお二人とも「水平・垂直・扁平」の原則に留意され、 「波勢・波磔」も上手に書かれていましたが、 残念ながら大きさが足りませんでした。 あと一つスケールが大きければ、 グッと見るものの胸を打つに違いありません。
墨が裏面まで真っ黒になっている状態を入木といって尊重しますが 、 皆さんの作品が半年前とは全く違う入木の線質になっていることを 嬉しく思います。児童たちの左払いに墨が入らないので、「 筆管を自分の鼻の方に倒して左払いを書こう」と示しましたが、 その言葉の裏付けがありませんでした。何とか先人の言葉の中で、 私と同じようなことを伝えている先生はいないかと、 二玄社の書道講座を読み直しました。 その行書編の炭山南木先生の用筆法の解説の中に「 四転の妙というが運筆法に当たって筆を臨機応変あらゆる方向に倒 すことによって、変化に富んだ線を作り出してゆく。 具体的に言えば、 筆の進む方向に筆管を多少倒してやるようにする。 これが私の用筆法といえそうだ」と記されていました。 あまり極端にやらず、自然体で少し、 筆の進む方向に筆管を倒して送筆すれば、 墨の入った線が引けます。是非、実践してみてください。
隷書を親として派生した草書・行書・楷書ですので、
墨が裏面まで真っ黒になっている状態を入木といって尊重しますが
漢字規定部(特級以下)
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【選出所感】
先月号のこの級の方に、 裏にしっかりと墨を入れた線を引きましょう。と記し、 そのための具体的な墨の入れ方、紙への持って行き方、 筆の立て方進め方を述べましたが、残念ながら、今回の「 富貴安楽」という課題においては、 あまり実践されなかったようです。というより、 画数の多いこの字面に対して、 含ませる墨の量が足りなかったのかもしれません。
初心の方には少し難しいかもしれませんが、 これも二玄社の書道講座の楷書編に、 金子鷗亭先生の用筆法として、「いわゆる俯仰法(ふぎょうほう) 、陰陽法というものがこれで、筆の進む方向に軸端が倒れる。 横画は軸端が右に倒れることによって、掌が仰向けになる。 縦画は軸端が手前に倒れることによって、掌が俯せになる。 ひらいてはいけない。斜画は左へ払う場合は俯せになり、 右にはらう場合は仰向けになる。 このような用筆から運筆の合理性というものが出てくると私は思っ ている。」と述べておられます。段位の方の解説文では、 行書編の炭山南木先生のお言葉を引用させていただきましたが、 お二人の先生に共通している用筆法だと思います。
書聖王羲之の筆法=古法=俯仰法(ふぎょうほう)= 筆の進む方向に筆管を多少倒して進める方法だと考えて、 すこし手首を柔らかく操作して線を引くように心掛けていただける と、裏までしっかり墨の入った線が引けると思います。
先月号のこの級の方に、
初心の方には少し難しいかもしれませんが、
書聖王羲之の筆法=古法=俯仰法(ふぎょうほう)=
条幅部
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【選出所感】
師範の方は、謙慎展に出品するので、 そちらに気持ちが入っており、 条幅部に出品される方は多くありませんでした。そのような中、 紫雲さんは、五言絶句40文字を半切二段に前半後半と書き分け、 よく練習され、それらの作品もお稽古に持参されていました。 半切の方が、断然一枚単価が安いということ、 すこし文字が大きいだけで筆圧がつくということ、 書き終わった後に如実に反省点が分かるという利点があります。 そして復習を兼ねて半切に三行で四季の書にも出品してくれました 。同じ字面でも、用紙サイズが異なるだけで、 随分と勉強になると思います。怜奈さんは、 自分で詩句の選文をして趙子謙字典で集字をしてからの創作となり ました。字書の字は”かげろう”のようなものですから、 法帖を見て臨書し、その反復繰り返しで書くように指導しました。 謙慎展にも出品するので、今回までは、お手本を書きましたが、 来春からは一人で書ききるという覚悟を持ってくれたらと願います 。 妙蓮さんは課題の詩句を範書とは違う北魏楷書で書作してくれまし たが、いつもながら筆圧の強さを発揮した作です。 ご自身の長所をこれからも伸ばして頂きたいものです。 章子さんは2か月かけてのお清書でしょう。 このような継続的な取り組みもご本人の血肉となるに相違ありませ ん。
師範の方は、謙慎展に出品するので、
臨書部
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【選出所感】
今月から始まった智永の関中本千字文の楷書(真書) の臨書ですが、多くの出品を得て嬉しく思います。そして、 量だけでなく、質も初回にしては高いものがありました。 字の大きさは、 このくらいのやや小粒な字が品格を高めて良いでしょうね。 文字の周りの余白もこのくらいの大きさですと活きてきます。 墨の量も多く豊かな線で書かれていました。裏から見ても、起筆・ 転折・収筆のところに墨だまりがある作も少なく、大抵の方が、 送筆部でも墨が入っている線で書いていました。 どなたが掲載されても良いような力作ぞろいでした。 この調子で意欲的に取り組んでください。
今日では、正倉院から流出した肉筆である”真草千字文”と、 拓本(精拓)である”関中本千字文” の二種類を出版物としてみることが出来るのですが、 あえて今回は、 肉筆ではない拓本の方を選んだのには理由があります。 条幅の課題の趙孟頫も元の時代の名手でやはり王羲之の書法をリス ペクトして自らの書を極めた書人です。 智永も王羲之の子孫ですから、 二人の王羲之崇拝者の肉筆を臨書するのは面白くありません。 智永の方はあえて、拓本の関中本千字文を選ぶことで、 拓本の持つ「古雅(古風で優雅なこと)」 を感じていただきたいと思いました。 作品掲載に選出したお二人の作には、その「古雅」 が表現されていたと思います。
今月から始まった智永の関中本千字文の楷書(真書)
今日では、正倉院から流出した肉筆である”真草千字文”と、
随意部
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【選出所感】
書道講座の用筆法を読みながら、私が、子供たちに言っている「 左払いは筆管を自分の鼻の方に向けて払おう」 という言葉の裏付けがされたことを嬉しく思っています。 その影響もあって、時間があるときは、 集王聖教序の臨書に明け暮れています。 それも六文字で上手にまとめようというのではなく、 四文字でどのような筆の操作法で書くかに留意してのものです。 あれこれと筆を倒しながら、 どうしたら墨の入った入木の線が引けるかを試行錯誤するのは、 この年になっても楽しいものです。 私と一緒に集王聖教序を習ってくれている初段と1級のお二方の臨 書作品を選出しました。お二人とも、 裏までしっかり墨の入った線を引くようになりました。 そして転折ごとでの墨だまりも見えません。 とてもスムーズに流れるような転折に変わっているではありません か。まさに俯仰法(ふぎょうほう) の効用といっても良いかもしれません。 このように基本に返って拡大して臨書するのも眼の勉強になると思 います。先月号に記したように、春・新・端・ 酒などなどの一字書でもかまいませんし、今回のような、 四字書きの臨書でも原寸大に臨書するでも、 そして墨色もどのようなものでも結構です。 自由に楽しく筆を友として出品して頂ければと思います。
藍泉さんのように、 智永の草書の方を学ばれるのも良いかもしれません。
書道講座の用筆法を読みながら、私が、子供たちに言っている「
藍泉さんのように、
実用書部
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【選出所感】
この部門で一番の課題は「蘭亭序」毛筆細字でしょうね。 実は私も毎回、一行十一字の蘭亭序を臨書してきたのですが、 取り立てて”俯仰法(ふぎょうほう)” ということを意識せずに細字での臨書をしてきました。しかし、 選出所感に記したことを意識して書いたら、 何か少し変化したように思われます。ただ字形を追って、 筆を動かすより、俯仰法(ふぎょうほう) に裏付けがあると自信をもって、線が引けるのかもしれません。 2㎝四方のマスのなかに穂先をたてて書くわけですから、 そんなにはっきり筆管の方向が分かる訳がないと思うかもしれませ んが、意外と横画は手を仰向けにして、 筆管を右側に倒して書けば命毛だけのすっきりとした横の線が引けます。 そして縦画は少し、親指を紙面に近づけるようにして、つまり” 俯”の状態にしても、 皆さんが書かれている線よりはシャープな線が引けると思います。 今、親指を紙面に近づけるようにして、 縦画を引くと述べましたが、掌を伏せるような状態とか、 すこし手首をひねるようなつもりなどという言葉でも良いかもしれ ません。ご自分であれこれ工夫をしてみてください。また、 細字の場合は、ほとんどの方が単鉤法ですから、 意識するのは中指の動かし方です、筆管に向かって、 どのような方向から、どのような力を入れるのかに、 充分意を用いてください。俯仰法(ふぎょうほう) と中指の持ち方を意識して、すっきりした縦画を書きましょう。
この部門で一番の課題は「蘭亭序」毛筆細字でしょうね。


















