選者選評 岡田明洋
漢字規定部(初段以上)
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【昇段試験対策】
「明月流素光」手本を左上から説明していきましょう。 唐代の欧陽詢風の書き振りです。 法則的な起筆と右上がりの統一感。 全体的に背勢の結構をとります。「素」・ 「光」が細く弱く見えてしまわないよう、 「素」の四画目と「光」の左右のはらいを幅広く取りましょう。
隣の行書は、米芾系の書風です。極力頭でっかち・ 左傾の構えをとります。この行書も楷書も「明」の偏を「目」 に書いていますね。これはもともと窓辺に射す月の光をします。 次の隷書の「明」の偏がその形を表しています。 もう少し渇筆を用いても良いですが、 かるく細くならないように注意してください。
下段左は隷書です。水平・垂直・扁平 になるように心掛けてください。「素」 の四画目のうねりのある横線を波勢(波のような形をしたもの) といいます。 この線が右上がりにならないように気をつけてください。
最後は秦代という小篆が書かれていた時代に、 もうすでに隷書が生まれていたということを証明する秦隷と呼ばれ る書き方です。「明」の偏はすでに「目」になっています。「流」 の旁は生まれ落ちた子に頭髪を加えた形をしています。 古代は生まれた子を水に流して占ったと言います。怖いですね。「 素」の金文は、 糸束の上部を強くねじって硬く結んだ形を表します。 その上部だけ色に染まらず白く残ったので、その部分を「素」 といいます。本来の色の白ということですね。 しかし垂と糸によって秦隷は書かています。光は、 火をつかさどる人のことを指すので、 火や光を扱う氏族の職を示す字です。 この書体は文字の起源を学べる書体でもあるので楽しいですね。
「明月流素光」手本を左上から説明していきましょう。
隣の行書は、米芾系の書風です。極力頭でっかち・
下段左は隷書です。水平・垂直・扁平
最後は秦代という小篆が書かれていた時代に、
漢字規定部(特級以下)
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【昇段試験対策】
「登山臨水」手本を左上から説明していきます。左上は、 基本的な楷書です。別段何々風とこだわることなく、 初心者の方にも筆を執って頂けるようなオーソドックスな書き振り といっていいでしょう。ハツガシラの筆順には注意してください。 筆順を間違えると字形が崩れます。ハツガシラの最後の画が、 下部の横画の起筆に向かうようになっていれば良いですね。山は、 縦画の起筆をしっかりとためてから下に向かいましょう。「臨」 は絶対に幅広にならないように。一画目は縦画ですよ。 そして二画目を最も短い線で書くようにしましょう。 口三つはすべて縦長の形にします。水は、ハネ・ ハライに集中します。 二画目の右端と右払いの起筆の高さをそろえてください。 こちらが下がってしまうと、水の形はとれません。 行書も基本的には楷書で注意したようなところを守って、 少し左傾にしていただければ、良いと思います。 今回の課題は上二字が繁で、下二字が疎ですので、 なかなか難易度の高い課題です。 その中で草書に挑戦するのも良いかもしれません。楷書・ 行書に比べて、 字の密度にそれほど差がなく紙面をまとめることが出来ると思いま す。気脈の流れを学ぶことが行書へもつながります。 是非臆することなく、省略の美に挑んでみてください。 更に勇気をもって秦隷をどうぞ。このクラスで、 小篆やら秦隷で出品してくれる方が増えました。 絵画だと思って楽しんでいただけたら嬉しいですね。山・ 水まさに絵ですよね。
「登山臨水」手本を左上から説明していきます。左上は、
条幅部
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【昇段試験対策】
条幅A(六段以上受験者の課題)の範書に書かれているものは、 上段は、隷書と北魏楷書と呼ばれるものです。 いずれも力強く男性的な書体といえますが、中鋒・ 蔵鋒の筆遣いが中心となります。一行目には、 単体が多くやや細い行立ちになってしまいますので、 一行目は二行目以上に墨量を多くして、立派に見せましょう。 特に「登・高・去」が貧弱になっては作品として成立しません。 半切二行目は見映えのする文字が並んでいますから、 ややおとなしめに書くと良いでしょう。
下段の草書、行書も同じようなことが言えます。 一行目上の五字に意を注ぎましょう。どちらも「高」 に墨を入れても良いかもしれません。 頭五字がエンジンとなるような気構えが必要です。 草書の文字郡ごとに文字の傾きが過ぎると行が蛇行してしまいます ので、充分に気をつけてください。
条幅B(五段以下受験者の課題)についてです。 上段は楷書二体です。北魏楷書を書く方は、 兎に角堂々と力強く書くことです。 字形が扁平でやや字間が広くなってしまうので、 弱くならないために一字ごとの存在感を高めましょう。 行書十四文字は、画数の多少、大きさの大小、 空間の疎密など変化を出しやすい字面ですので、 表現するのが楽しくなるでしょう。 墨量の変化を思い切りつけると一層よくなります。下段右は、 新資料を基に私がここ20年程勉強している秦隷風の半切作品です 。
条幅A(六段以上受験者の課題)の範書に書かれているものは、
下段の草書、行書も同じようなことが言えます。
条幅B(五段以下受験者の課題)についてです。
臨書部
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【昇段試験対策】
7月から9月にかけて、正式書体である隷書の中でも、 江戸時代から今日にかけて沢山の書家に学ばれている曹全碑をやっ てきましたが、 隷書の特徴を理解されている作品が多く出品されていて嬉しい限り です。隷書やそれ以前の篆書を学びますと、 中鋒の線が鍛えられて線質が強くなります。水平・垂直・扁平・ 波勢・波磔(はたく)を心掛けていることが伝わってきます。 半紙でも半切でも波磔があるかないかで重心が左右に移動してしま います。波磔がある字はどうしても重心が右に寄ってしまうので、 一枚書き上げるごとに重心が蛇行していないか確認しましょう。 それとともに一枚書いたら裏の墨の入れ具合もチェックしましょう 。墨が入って黒々とした線が良いのです。
米芾の行書を書かれる方は字の全体の外形がどのような形になって いるかよく見てください。 いつも言う左傾になっているかをチェックするためには、 文字の右上の空間が◥ のような空間になっているのか見ればよいのです。 この米芾の行書は、 蜀素帖でも苕渓詩巻でもその他の法帖でも構いません。 いずれにしても王羲之の伝統を伝えようとしている書き振りですか ら…
いずれでも、直筆と側筆、蔵鋒と露鋒を確認しながら出来れば、 筆管の倒し具合も考えて、筆を操作出来たら良いですね。
7月から9月にかけて、正式書体である隷書の中でも、
米芾の行書を書かれる方は字の全体の外形がどのような形になって
いずれでも、直筆と側筆、蔵鋒と露鋒を確認しながら出来れば、
随意部
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【選出所感】
私が大学生の頃、青山杉雨先生は、書道の合宿で、 ご自身の編集された”呉昌碩の画と賛”を用いて、 半切の臨書作品をお書きになっていました。それとともに、 半切の2分の1の大きさに”呉昌碩の画と賛” の中にある二字の句をよくお書きになっていました。「茶煙」 とか「醸酒」 とか朱書きされたものを今でも大切に保存してあります。 そこで提案です。 半紙に好きな古典作品から一字もしくは二字を拡大して作品化して みたらどうでしょう。今月の課題でしたら、「素」 などは行書や秦隷調のものなら一字書きも良いでしょうし、「 素光」なら半紙に楽に収まります。 古典や先生のお手本をモチーフにして、筆力を高め、 潤渇を思い切りつけてみる。 時にはデフォルメした形が何とも言えない創造的な字形を表現する かもしれません。反対に米芾の苕渓詩巻などは、 原帖はほぼ半紙の高さと同じ高さですので、 半紙に四行で臨書しても良いですね。
次回からは堅苦しい解釈でなく、 もっと幅広い自由な表現をしている作品も選出していきたいと思い ますので、 これをしてはいけないなどと自らを束縛することなく淡墨に挑戦し てみるとか、筆を思い切り剛毛にしてみるとか、 左手法を多用してみるとか、 とにかく様々なスタイルに挑戦していただけると嬉しいです。
私が大学生の頃、青山杉雨先生は、書道の合宿で、
次回からは堅苦しい解釈でなく、
実用書部
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【昇段試験対策】
「蘭亭序」の臨書は密と疎の繰り返しですので、 変化が生じやすく比較的まとめやすいのではないでしょうか。「 類」は正字は、「米」に「犬」に「頁」です。 上帝を祀る祭儀を言います。 米とともに犬牲を供えて拝する頁の会意字です。 今の常用漢字では、「犬」を「大」 にしていますが全く意味をなさないものになってしまいます。「 分」にしてあるのは、どうも隷書あたりからで、行書は「犬」を「 分」に、楷書は「犬」を「大」にしてあるのが多いようです。「 盛」の「戈」の点は書きませんでした。「蘭亭序」 原帖にもありませんでしたので、そのまま臨書しました。「遊」 は今は「方」を書きますが、本来は旗竿の形を表す、 手偏のような形で表現されていますから、 ここでもその形で臨書しました。「騁」は「由」 の中の縦画と横画はペン字のように交差した方がよさそうです。
毛筆で書く前に前述した点に留意しながらペンで何回も臨書して、 しっかりと頭の中に叩き込んでから毛筆で肥痩に気をつけながら臨 書してみてください。
若山牧水の和歌「白玉の~」は、人口に膾炙している名句で、 私も若い時からこの句を口ずさんで清酒をいただいたものです。「 青天を衝く」で紹介された徳川慶喜公ゆかりの”浮月楼” で秋の園遊会が今月末に催されるようです。コロナ禍で行動を制限された皆さんはきっと秋の夜の酒をお楽しみ になることでしょう。是非思いを込めてペンを走らせてください。
「蘭亭序」の臨書は密と疎の繰り返しですので、
毛筆で書く前に前述した点に留意しながらペンで何回も臨書して、
若山牧水の和歌「白玉の~」は、人口に膾炙している名句で、