選者選評 岡田明洋
漢字規定部(初段以上)
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【選出所感】
漢字規定部の師範の方々は、新師範の天野恵さんの加入もあり、 多士済々、各書体が集まって楽しい審査となりました。
今回は六段、五段の方について、着目してみましょう。 それはこの層の方々が今後の「四季の書」 の成長の鍵を握るからです。皆さんの多くが書かれているのが、 楷書体です。それも比較的、 現代でも良く書かれている唐代に完成された楷書体です。トン・ ツー・ トンの三過折と右上がりを意識して書かれてはいるのですが、 皆さん書き急いでいるように思います。 裏を見ますと起筆のところの墨のオダンゴ、 収筆のところの墨のオダンゴ。しかし、 送筆部には黒い線がないのです。 それは書き急ぎによる墨不足によるものです。 一字ごとに墨池の底に筆の腰を当てるようにして、 根元をほぐして墨を含ませます。横画を書くときは、 筆管を押し出さず、 筆管のトップを右に傾けるようにして進めると裏から見ても墨の入 った一本の線となります。起筆で腰まで、 つまりごつんと紙にあてずに毛先をS字型にするような気持ちで筆 を立ててから送筆部に移ることが肝要です。運筆しているときに、 紙面から墨がにじみ出てくるような感触を得るためには、 ゆっくりと息を吐きだしながら進めてください。 最後の収筆も毛先をまとめるつもりで、 左上に突くような気持ちで終わると良いです。 そのためには双鉤法の方は薬指を右下から筆管にあてるように 用います。この操作法を心掛けてください。
漢字規定部の師範の方々は、新師範の天野恵さんの加入もあり、
今回は六段、五段の方について、着目してみましょう。
漢字規定部(特級以下)
【選出所感】
近頃、 私のところにも新規のお弟子さんや復活して再び筆を執ってくれる 方たちが数名入会してくれています。 コロナ禍において嬉しいことです。
その皆さんに私は字形のことよりは、姿勢・手首の形・ 筆の持ち方・指の使い方を多くお話しているように思います。 実用書部でも書きましたが、 筆管が寝ていると毛先の効いていない、 いわゆるハケ状で書くことになってしまいます。
そして必要以上に力を入れすぎないことを説きます。「虚掌実指」 というのがそれにあたります。 手のひらはリラックスした状態で指先に集中して力を入れるという ことです。卵が手のひらにあっても握りつぶしてはいけません。
先日電車の中で、 高校生が鉛筆でノートに何かを書き込んでいるのを見ました。 その子の持ち方を見ますと、親指を突き出して、人差し指、中指、 薬指の三本で鉛筆を握り、小指は鉛筆の下にあるのです。 まったく手のひらに空間がありません。十余年、 誰からも注意をされなかったのでしょうか。 かくいう私も車中で高校生に話しかけるわけにもいかず、 黙ってみていただけでした。 教えることが出来ればどうだったろうか。 と切なく思ってしまいました。
近頃、
その皆さんに私は字形のことよりは、姿勢・手首の形・
そして必要以上に力を入れすぎないことを説きます。「虚掌実指」
先日電車の中で、
条幅部
【選出所感】
条幅部の課題は、 1か月おきに五言絶句と七言二句が交互にやってきます。
四段までの方は2か月かけて七言二句の14文字を書いてくれると 良いと思います。
五段以上の方は五言絶句の20文字を、 これも2か月かけて提出して頂ければと思います。又、 3か月おきに、正式書体(篆・隷・楷)と略式書体(草・行) で書き分けています。 昇段試験時に課題となる書体を常日頃から二体勉強できるシステム となっていますので、積極的にご活用ください。 半紙に書くよりも条幅に書けば数倍の力がつきます。まずは、 文字が大きくなるため筆力が必要となります。 墨をつける分量も多くなります。墨を多くつければ、 墨の流れ出るのを防ぐ、指の操作が大切になります。 一行における文字の蛇行もすぐに目に留まります。 行間を意識することが目の勉強に大いに役立ちます。 昇段試験の時だけ条幅に取り組むのではなく、 少しでも構わないので、条幅に書くことの効用を信じて、 普段から取り組んでください。今月の出品数は16点でしたが、 まだまだ多くの方の出品を望みます。
条幅部の課題は、
四段までの方は2か月かけて七言二句の14文字を書いてくれると
五段以上の方は五言絶句の20文字を、
臨書部
【選出所感】
わずか3か月の蘭亭序ですが、 実用書部と兼ねているということもあり、 随分と秀作がありました。藍泉さん、桃苑さん、錦流さん、 順子さん、平吉さん、蓮㳺さん、紫雲さん、紀子さん、一洗さん、 怜奈さんは、スマホ版と紙一重の差といってもいいでしょう。 やはり、 後世の書法家も蘭亭序を勉強して一家を成しているのですから、 21世紀の私たちも行書において、 最初に習うべき古典作品だと思います。
「天朗気清恵風」の六文字は語句の意味も姿も軽快で、 すがすがしいものであったので、秀作ぞろいとなったのでしょう。 語句の選定が大切ですね。書いているうちに、朗らかになり、 清らかな空気に満たされているような感じがして、もう一枚、 もう一枚と書いていったのでしょう。つまり「何を書くか」 ということは重要な要素なのです。又「どのように書くか」 ですが、王羲之らしい文字構造は、俗な言葉で言えば、 頭でっかちなのです。特に左上の空間を広くとることが大切です。 「天」の一・二画目の広さ、「朗」の左側の空間の大きさ、「清」 の青の重心の低さ、「恵」の一画目と由の間の大きさ、 などしっかりと観察しましょう。又、 文字の右上の三角の空間を意識することも左傾を確認する一助とな りますので、是非チェックを忘れないようにしてください。( 5月配信の臨書部の選出所感を参照してください。)
わずか3か月の蘭亭序ですが、
「天朗気清恵風」の六文字は語句の意味も姿も軽快で、
随意部
【選出所感】
「四季の書」の審査員が書いている「参考手本」 をご覧になって出書してくれる方も増えてきました。 楷書では初心者の方には智永の千字文を薦めます。 柔和な線でリラックスして線が引けるからです。 無用な緊張感を取り除いて、 肘や肩を中心にして字が書けるようになったら、 もっと字を書くことが楽しくなります。 千字文の中から好きな四字句を選ぶとしっくりと表現できます。 裏に墨がしっかり黒く入るようになったら、 唐代の楷書に入っても良いかもしれません。 むやみに六文字書かなくても、 筆力をつけてからの課題としても良いでしょう。 行書は蘭亭序から入って、基本である曲線になれると( 私たちは楷書人間ですから、 どうしても直線的な線を引いてしまいます。)、 転折などで必要以上に抑えることなく、 スムーズに運筆出来るはずです。そして、 線の連続性と画の省略にも意を留めるようになります。
基本的には、 正式書体の楷書と略式書体の行書のスタンダードなものといえば、 智永の真書(楷書)と蘭亭序ということになりますか。 もちろんこれは私見ですが、 私の糧となったものと考えていただいても結構です。” 師の書を学ぶのではなく、師の学んだところを学んで” いただけたら嬉しく思います。そのような意味で、師範の方は、「 参考手本」を有効活用して、自分探しをしてみてください。
「四季の書」の審査員が書いている「参考手本」
基本的には、
実用書部
【選出所感】
先月の昇段試験の結果を受けて、師範合格、 特待生合格の方に自筆の感想文をお書きいただきました。皆さん、 ご自分の書道に関わった時間を大切に思って、 しっかりとペンで書いてくれました。
スマホでこのことをお知らせすると、ある人から「 直筆だとお弟子さんたちの喜びが伝わってきますね。 自分ならいつか振り返った時に『合格時の字』と『それ以降の字』 が比較できてうれしいと思います」とコメントをいただきました。 新しい視点です。時間を超えて、 自分の字をスマホで見るなんて面白いですね。
そのような意味で、 実用書の部を充実していけたらいいと思います。王羲之の書も、 もともとは手紙の文字です。1600年余の歳月を経ても、 王羲之の手書きの文字が私たちの書のお手本になっているのです。 新様式ではありませんが、私も自筆の”カレンダーお知らせ” を書いて、それを写メしてラインで送っています。
今回の実用書の昇段試験は、総じていえば、 毛筆細字が一番出来が悪かったようです。 筆管が右に倒れたまま縦画の運筆に入ってしまうので、 太い線になってしまいます。 すこし親指を左下に下げるようにするだけで、 立ち方は随分と変わります。細くても強い線になりますので、 持ち方を矯正してみてください。
ペン字の蘭亭序はよく書けていました。和歌は行書の字形と仮名の流れが融和すれば、 断然よくなっていくと思います。 四季の書で五つの部門を書きこなせば、”書く力” がつくと確信しています。
先月の昇段試験の結果を受けて、師範合格、
スマホでこのことをお知らせすると、ある人から「
そのような意味で、
今回の実用書の昇段試験は、総じていえば、
ペン字の蘭亭序はよく書けていました。和歌は行書の字形と仮名の流れが融和すれば、