2021年2月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋

漢字規定部(初段以上)

※作品は押すと単体で表示されます

永嶋 妙漣
さわやかな線で、北魏楷書の中に一風を感じた。
鈴木 藍泉
芯のある行の流れと、蔵鋒の妙が目をひく。
藤田 紫雲
居延簡を集字しながら、横画の伸びを再現した秀作。
濱田 芳竹
懐の広さを表現しながら、馬王堆の魅力を追求した。
【選出所感】四体の異なる作品を選出しましたが、いずれも私の書いた手本とは少しずつ違う書き振りで、各々が、それぞれ検字をしてからの書作のようで、大変喜ばしく思います。このような姿勢を貫けば、自分自身の好みを見出し、自己表現ができると確信しています。道のりはまだ遠いものがありますが、書く楽しみを感じながら、一歩ずつ成長していただきたいと思います。

漢字規定部(特級以下)

榎本 宏純
伸びやかな線と、安定感のある構成力を身につけた。
末永 芽以
真面目に起筆を立てようとする姿勢を貫き通そう。
【選出所感】親子でお習字を楽しんでくれているお父さんの作品(宏純さん)と十年以上私のところに通ってきてくれている高校生(芽衣さん)。それぞれ年齢も環境もことなりますが、共に「楽しいこと幾久しく限りないこと」を祈って正式書体である楷書を用いて、書作してくれました。楷書は書法史上、一番最後に到達した書き方であり、一番長い時間を用いられている書体です。ですからこの級の方は楷書から筆の用い方を勉強するのがやはり一番の近道になるかと思います。

条幅部

小田 一洗
独特の横画のリズムであるが、水平扁平の原則を得た作。
伏見 桃苑
真摯に蘭亭の形臨に挑んでいる。字肌優美。
竹本 聖
北魏楷書の用筆に挑む。更に筆圧を強くしよう。
萩尾 怜奈
やや扁平な結体と筆勢が融和した作。
【選出所感】
お正月であれこれと忙しかったのでしょうか。コロナで里帰りする家族がいなくても、やはり、おせちとか、お正月行事で大変だったのでしょう。そのため前月より出品数が少なかったのが残念です。
半面、十代の二人を写真版(?)に選出しました。スマホ版という言葉はありませんが、若い二人には良いネーミングかもしれません。自分の書きたい書体、得意な書体で挑戦しましょう。一般の方、どうぞ厚き壁となってください。

臨書部

中山 櫻徑
起筆の立てかたが妙、特に縦画のリズムが良い。
山田 淥苑
背勢を巧みにとらえ、求心性ある皇甫誕を表現した。
【選出所感】
普段は櫻徑さんは智永の真書を、淥苑さんは、北魏楷書をよく学ばれているのですが、今回は唐代楷書の名家、欧陽詢の皇甫誕碑の臨書作品で選出されました。選ぶときには何も意識していなかったのですが、いざ寸評所感を書くときになって気づきました。時代はそれぞれ異なっていても楷書という構築性には共通のものがあるのかもしれません。等間隔・等距離がしっかりしてこないと楷書は上手に書けません。これを「間架結構法」といいます。行書好き、草書好きの人もまずは、等間隔を意識しましょう。

随意部

長野 天暁
石碑の北魏楷書に毛筆の弾力を加味した張猛龍とした。
小柳 奈摘
高校生らしい真摯な臨書態度でよい。側筆を多用せよ。
【選出所感】
この随意部は何を提出しても構いません。前回は草隷・馬王堆。今回は北魏楷書・興福寺断碑、それぞれの書体もバラバラです。各自が取り組みたいものを選んで書いていきましょう。随意部の参考手本は私を含め、理事の方々が日ごろ学んでいるものを掲載しております。何か今まで知らなかった古典、初めて見る筆使いに新たな出会いを求めてみましょう。

実用書部

大村 玲扇
毛筆・ペン字とも字形の安定感に優れた秀作。
内海 理名
字幅の広狭を意識すれば、更に伸びる。波法が美しい。
【選出所感】
蘭亭序のペン字は、骨格をつかむつもりで臨書いただければよいと思います。骨がしっかりしてから、毛筆で毛先の弾力を意識しながら、お肉をつけていけばよいでしょう。ペン字でしっかりとした観察力を養うことが肝要となるでしょう。
和歌は漢字は大、仮名は小で組み立てながら、振り幅の変化に意を用いると美しい流れが出ます。
開明株式会社様より発売されています「墨抱」という純毛筆の筆ペン、少し値は張りますが、とても使いやすく簡便でおすすめです。