2026年05月 お手本【一般 条幅部・随意部・実用書部】

条幅A

「白居易詩」
岸を転じて船尾を回わし流れに臨んで馬の蹄を蔟(とど)む。
楊子渡よりも閙(にぎ)にぎわしく、魏王堤を踏み破る。

PDF

PDF

PDF

PDF

【手本解説】
いつものように上段左から説明していきましょう。北魏楷書として見映えのする字面で、まっ先に北魏楷書の原稿を作りました。やや於楊子というメインの箇所に画数が足りないというハンディーはありますが、墨量を豊かにすることでカバーしています。
2025年5月の昇段試験の対策の文章でも記しましたが、古谷蒼韻先生が縦に流れる長条幅の様式の時には縦線をゆっくり引くというご指摘に意を用いて制作しました。基本的に米芾の字体を多くとってあります。
草書作品は、王鐸の中に草書の字例がありましたので、それに、十七帖や書譜の草書を加え、長条幅の様式を作りました。細めの連綿線がありますが、むしろ、ゆったりとした連綿線にしたほうが格が上るかもしれません。
隷書は、蔵鋒・八分隷という考えを捨てて、木簡の率意性を重視した書き振りです。水平だけを意識して伸びやかな横画を引いて下さい。

[岡田明洋]

条幅B

「周憲王句」
彩檻露濃やかに垂柳湿い、
珠簾風静かに落花香し。

PDF

PDF

PDF

PDF

【手本解説】
左上から説明していきましょう。
段の方と同じように北魏楷書で集字した作品です。唐代楷書に比べると、入筆の角度が複雑になります。筆を進行方向の逆の左上から入れて毛先の弾力を生かしてから充実した線を肝に銘じて運筆しましょう。
右上は、先月お示したものより若干手慣れた感じがしますか。やはり多く書くことは大切です。腕が覚えてくれるのもありますが、書き込むことで、新たな対応が出来るのも楽しいものです。書き込むこととマンネリとは異なります。その時その時を大切にした表現を心掛けましょう。
下段左は、隷書です。半切に十四文字の字面は、いささか無理があります。どうしても、扁平という要素が欠如してしまいます。あまり扁平でない武威漢簡や鄧石如などの清朝書家の隷書の書き方を参考にしても良いと思います。
最後は、昇段試験の範書としてはどうかと思いますが、秦隷という書き振りです。篆書から隷書へと転じる過程の文字ですが、造形的に捉えても、字義的に捉えても、用筆的に捉えても非常に面白味がありますので、紹介の意味をもって一枚載せました。

[岡田明洋]

随意部

5月31日締めは、昇段試験のため随意部手本はありません。

実用書部

今治 宇和島市 西条
ははそはの母をおもへば仮初に生れこしと豈(あに)おもはめや

PDF

【手本解説】
私ごとですが、五月一日に七十一の誕生日を迎えます。昨年古希展を開催しましたが、あっという間の一年でした。斎藤茂吉の「ははそはの母をおもへば仮初に生れこしと豈(あに)おもはめや」母をおもへば、たまたま私が生まれてきたとは決して思えないことです。という意味です。私たち人間は、わずか0.6ミリグラムの受精卵が、母親のお腹の中にいる間に、540万倍の重さ、つまり3250グラム前後の赤ちゃんとしてこの世間に生まれてくるのです。母体の内での成長ぶりは、まさに神秘と言って良いでしょう。このようなことを思いながら書いて頂ければ、書技うんぬんなどは述べなくても良いでしょう。
地名は、画数が少ない字が並びますので、少し太目な線を用いても良いと思います。

[岡田明洋]