臨書部
臨 米芾 「便起故巣嗟」 |
第8回日展に今年も入選することができました。 コロナ禍において、勉強会に出かけることもできず、 今回は腹をくくってすべて一人でやってみようと決心しての書作で したが、 雑念ばかりが湧いて集中して筆を執ることが出来ませんでした。 日頃お弟子さんに言っている言葉を自分に問いかける日々の書作で した。素材は決まっていました。 私にとって書道史上で一番関心のある”馬王堆帛書”です。 篆書に近く、紀元前三世紀末の篆隷とよばれる書風。 題材はこれも一番好きな詩人李太白の詩です。 思いは募っても筆は進みません。 一人で制作する苦しさを味わいました。締め切り前夜、 お弟子さんに見せた候補作2点。「これでは駄目だ! 絶対に落選だ!」率直な感想です。作品の上部の充実感不足。 3行立ての作品を紙のサイズを変更し、 4行立てにしてみることにしました。 これを半紙にデッサンしなおしました。 窮したところの方向転換でしたが、 それが功を奏したのかデッサンの半紙上でも配字がかわり、 上部が気に満ちてきたのが分かりました。そこで再度の校字です。 すると字典の中の文字が叫ぶのです。「 おれはもっと重心が低いぞ!」と。そうなのです。 いつの間にか作品の中の私の文字は足長になっていたのです。 そこを修正して、翌朝3時起きで書作。 この数枚のうちの一点が入選できたこと。最後の悪あがき、” もう一押し”が出来たことを嬉しくおもいます。 米芾の文字の重心も低いのです。