2021年7月 お手本【一般 臨書部】

臨書部

臨 曹全碑
「重親致歡曹景」


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三か月周期で、正式書体と略式書体と交互に課題とする方針を立てています。今回から隷書の中の曹全碑を取り扱っていきます。
曹全碑は青山杉雨先生が、好んで書かれていた隷書の古典です。東京国立博物館で開催された”青山杉雨の眼と書”にも折帖の臨 曹全碑が載っています。数ある漢碑のなかで、一番曹全碑を好んでいたのは、先ず文字が鮮明・明解であったこと、そして、描き出されたフォルムが理知的であったことに由来するのだと思います。
後漢の中平二年(185)に曹全碑は建立されました。曹全は黄巾の乱によって混乱していた行政を郃陽令となって立て直した功績によって、碑が刻まれました。しかし政局が大転換すると曹全は失脚することとなります。この建碑に尽力した人は、自分の名が出ることを恐れ、この碑を土中に埋めてしまいました。1400年間ほど土中にありましたが、明の萬暦の初年(1573)今の陝西省郃陽で出土されました。そのため、雨風にさらされることなく、美しい碑面が保たれたのです。曹全碑の拓本は、江戸時代随分、日本に渡ってきたようで、多くの書家に習われ、その書風は江戸の町に広まっていたようです。
このように曹全碑は、隷書という書体の構造を学ぶ上で恰好の古典です。波磔(はたく・髭のような形をした右にはらわれたもの)を有する八分隷(はっぷんれい)の典型であり、流麗優美な女性的な趣もあります。中国で20世紀の前半に発掘された、漢代の木簡の書き振りとも類似しているので、漢の時代の正式書体を学習するうえでは最高のテキストでしょう。