2021年3月 お手本【一般 臨書部】

臨書部

皇甫誕碑
「銜須授命結纓」

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一月締めの皇甫誕碑の臨書を指導していて、私の書いたものの参考手本がなんと平板なつまらないものかということをいやというほど思い知らされました。「風」のウエストの締め方。それでいて縦への空間の広がり。「叔」の懸針の縦画の不動たる伸びやかな長脚。「世」の内臓をえぐったようなウエストと左右にスッと広がった横画。それぞれ異なったスタイルの俳優さんがステージで踊っているようで、その均整の差に打ち負かされてしまいました。
このように古典の中の文字を擬人化してみるのもよいかもしれません。古典(法帖や人物像)の解説書を読むことはもちろん必要なことですが、まずは自分の素直な目で、目の前にある古典の姿を人になぞらえて観察してみるのもよいことだと思います。私の書いた「皇甫誕碑」は、到底原拓に敵うわけもありません。まずはコピーでも構いませんので、ご自身の裸眼で素直な曇りのない心でご覧ください。あくまで私の書いたものは、レンズの入っていないサングラスのようなもので、コンタクトレンズや眼鏡にはいまだなっていないということをご了承ください。
そのうえで要点を述べてみましょう。
①右上がりの強い横画からは、張猛龍碑の影響を感じます。
②ほとんど真横に入る縦画の起筆は、そのエネルギーを持続してスピード感のある鋭利な線となっています。
③左払いの鋼鉄の剣のような線に震え慄きます。
以上のことを念頭に置いて臨書してください。