2026年11月 お手本【一般 漢字規定部】

漢字規定部 初段以上

寒雲落暉を掩う
冬の寒げに見える雲が夕の影をとざしている

PDF

PDF

PDF

PDF

【手本解説】
あまり聞き慣れない言葉ですが、規矩(キク)という言葉があります。円を描くコンパス(規)と直角を測る差しがね(矩)のことです。転じて、物事の基準・手本のことを言います。先月号の規定・級位のお手本「舒情属思」は、すべての文字が歐陽詢が残してくれた石碑の中にありましたと記しましたが、今月の「寒雲掩落葉」も同様です。書の規矩たる歐陽詢の書作をなぞって書いてみても、九成宮醴泉銘のような完璧な楷書が書ける訳でもなく、首をうなだれるばかりです。カメラで撮影したものを見ての原稿書きですが、どうも、寒と落が大きすぎているようです。どのような規矩を用いても、満足出来る範書は書けません。
右下に書いてあるのも楷書です。北魏楷書とされており、唐楷の筆法が完成されるまでの模索が繰り返されています。起筆も逆筆の多用から、順筆へと展開されます。重心も低から高へ移って行きます。一口に楷書とは言いますが、数ある楷書作品の中からどのような表現を好まれるのかが問われるのかもしれません。

[岡田明洋]

漢字規定部 特級以下

霜砧(そうちん)月笛(げつてき)
霜寒き夜のきぬたの音とさえた月に吹く笛の音

PDF

PDF

PDF

PDF

【手本解説】
初唐の歐陽詢がいかに完璧な楷書を書いたかということを漢字部・規定・段以上の解説文に記しましたが、級の部においても同様です。
2026年1月以降の級の部の一枚目はすべて唐代楷書、しかも歐法に則っての範書です。余白がしっかりとした構えで四文字をまとめて下さい。
行書作品は、思ったより左傾が表現出来ていませんでした。条幅部の解説文をお読み下さい。霜の下部・笛の下部の相と由をもっと右寄りにすれば左傾が際立ったと思います。
草書は、円運動、連綿線を楽しんで、月の中の点々のように打楽器的な要素を入れてリズムをとってみました。もっと線の肥痩と墨の潤渇があっても面白かったかもしれません。
最後は、秦代の里耶秦簡からの字です。霜の2画目、砧の占の1画目、 月の1画目 は左手線を用いています。水平・垂直を基本にしながらも、右上がりの月や、霜のアメカンムリの3画目のような草書的な要素を有しているのも書体の複雑さを感じさせてくれます。

[岡田明洋]