選者選評 岡田明洋
漢字規定部(初段以上)
※作品は押すと単体で表示されます
【選出所感】
八月の漢字規定部の選出所感に「五・ 六段の方の墨の用い方の意識がすこぶる変化しました。1. 3倍くらい墨量が多くなったのではないでしょうか。そして、 送筆にかける時間も随分と長くなったのだと思います。」 とコメントしましたが、十月の昇段試験を経て、六段・ 準師範となっていますが、 その方たちの力がめきめき着いたように思います。 行書や草書を書いてくれた方も、 裏を見てもしっかり墨が入っていました。 手本を見る力が着いたということです。字の形だけでなく、 空間を読み取る、墨量が推量できる、 スピードも推測できるようになると平面的なお手本から立体的な作 品が生み出せるようになると思います。今回、 北魏楷書を選出てきませんでしたが、 一行目の文字が複体ばかりで、 単調な字形となってしまったようです。 起筆の強さを代えてみると良かったですね。「雁」の一画目、「 語」の二画目。「和」 の二画目が同じような起筆で書いてしまった作品が多かったです。
行書は掲載が二点ありましたが、 少しの変化で雰囲気は違ってきます。 そこが行書を書く時の楽しみではないでしょうか。 曄真さんは米芾調で、雅敏さんは米芾が基調でしょうが、 濃墨を用いたために、やや蘇軾が入ったようにも見えます。 皆さんもあれこれと工夫してみてください。
八月の漢字規定部の選出所感に「五・
行書は掲載が二点ありましたが、
漢字規定部(特級以下)
【選出所感】
九月の段位の所感に「 どなたがスマホ版になっても不思議ではありません。」 と記しましたが、正に今月号は競い合っていました。 美由紀さんは「雲聳奇峰」では「線の厳しさが目を引きます。」 と評しましたが、更に強さが際立つ線質となりました。 新規三名の方の作品について順不同で記してみましょう。 真紀子さん、「剄心」の字幅があってよい。「竹」と「柏」 も左右の間を空けましょう。満弓さん、線質が美しい。 字形にも乱れがない。左払いは、 筆管を自分の鼻にむけて払いましょう。瞳さん、 線が鋭い切れ味が良い。短い線、「柏」の「白」の中の横画や「 心」の点を少し気をつけて書いてみましょう。 新規の方も課題を見つけながらも、 あまり神経質にならずに楽しんで筆を執って頂けると嬉しいですね 。
さて、新しい方が入りましたので、 字の形で一番私が気にしていることを記します。
①口のさいごの横画を出す。口の中に横画が入っていたら、 二画目の縦画を出す。
②偏は横向きおもてなし。「木」のたて画は中心に書く。「 キヘン」の縦画は右に寄せる。「金」は金メダリストで正面向き。 「銀」は金メダリストの方を向いて、横向きになる。 つまり縦画は右に寄せるようにする。「言」の点は中心に、「 ゴンベン」の点は右に打つ。 此の二項目を岡田の法則といって教えています。 あらゆる漢字に応用してみてください。 上達すること間違いなしですから。
九月の段位の所感に「
さて、新しい方が入りましたので、
①口のさいごの横画を出す。口の中に横画が入っていたら、
②偏は横向きおもてなし。「木」のたて画は中心に書く。「
条幅部
【選出所感】
師範の方で、新しい古典に挑戦してくれた方が数名いました、 嬉しいことです。
ただ、残念なことに、 二段から五段の方の条幅部の出品者がゼロでした。 本当に悲しく思います。 今月の課題は五言絶句ですから出品できないというのではなく、 一般条幅部は既定のサイズ(条幅サイズ(半切サイズ) であれば手本を参考にし出品することも、そのほか臨書、 創作作品を出品することも認めています(四季の書 規約も参照ください。)ので、先月号の課題でも構わないのですから、 出品いただければ嬉しいです。
五言絶句の20文字より、 七言二句の14文字の方が考えようによってはむずかしいのです。
まずは、少し文字が大きいだけですが、 筆力が不足していると弱い線になってしまいます。 穂先だけを用いるのではなく、 筆の腰の部分までの弾力を生かさないと緊張感のある強い線が生ま れないのです。
第二に一行10文字か11文字の時は、字間が詰まっているので、 それなりに密度が生じ、自然に行間が美しくとれるのですが、 一行8字ですと、やや字間をとりすぎて、 気脈がつながらないことがままあります。
そのようなことを意識して、是非今月の条幅課題「王初句」 を書いてみてください。12月締めですが、 来月に出品いただいても構いません。昇段試験の時だけでは、 充分に実力を発揮できません。半紙で飛躍しているのですから、 是非、
条幅部に出品するよう心掛けてください。 私の書いたものをご覧になって「 一枚でもいいから書いてみたいな~」 と思っていただけたら嬉しいです。
師範の方で、新しい古典に挑戦してくれた方が数名いました、
ただ、残念なことに、
五言絶句の20文字より、
まずは、少し文字が大きいだけですが、
第二に一行10文字か11文字の時は、字間が詰まっているので、
そのようなことを意識して、是非今月の条幅課題「王初句」
条幅部に出品するよう心掛けてください。
臨書部
【選出所感】
臨書部のお手本は、いつも冷や汗ものです。 お手本として掲載されたものと原帖を比較しますと、 その捉え方の甘さにウムッとうなってしまいます。今回のものも「 菱」 の字の全体の中における存在感の大きさを表現することが出来ませ んでした。やはり、原帖を見て臨書していただけると良いですね。 コピーでも構いません。コピーを拡大して、一行目、 二行目ごとの字の重心を結んでたてのラインを引いてみるなど、 ご自分で補助線などを用いて観察してみてください。 以前おすすめした、偏の一番下のところから右に水平の線を引き、 その高さに対して、 旁が上なのか下なのかをチェックすると偏と旁の関係が理解できる と思います。私のお手本もそのような方法で書いているのですが、 一ヶ月経って見ると反省するばかりなのです。 締め切りという時間に追われ、これでいいやと思っても、 一ヶ月たてば、このありさまなのです。 時間という審査員はいつも、このような冷徹な目をもって、 自身の中で眼を光らせてくれます。恐ろしいものです。
そのような中で、優秀作品としてあと少しだったのが、 妙連さん苕溪詩巻の肉太な感じが良く出ていました。 藍泉さん伸びやかな線と正しい結体。 一洗さん穂先が紙面に食い込んだ線が魅力。
みなさんはわずか三か月のお稽古でしたがしっかりと取り組んでい ただけました。
臨書部のお手本は、いつも冷や汗ものです。
そのような中で、優秀作品としてあと少しだったのが、
みなさんはわずか三か月のお稽古でしたがしっかりと取り組んでい
随意部
【選出所感】
「四季の書」の随意部の参考手本には、隷書・草書・行書・ 楷書が載っています。それぞれの書体の中にも、 異なった書風がありますので、 一枚試しにお書きになってみてください。「四季の書」 今回の配信で12回目です。一年を振り返って、 随意部の参考手本40枚をご覧になって、気分の趣くままに、 書きたいなぁと思ったものを数枚選んで書いてみてください。 その数枚すべてが行書でしたら、 行書に最大の関心があるのかもしれません。 あれこれと違う書体を書いていただいても構いません。 好きな書き振り、好きな古典を見つける端緒になるはずです。 あまり深く考えすぎず、まずは第一印象の良かったものを選んで、 真白い半紙に筆をおろしてみましょう。 自分が思いもよらなかった出会いがあるかもしれません。 私も45年前に西川寧先生が謙慎展に出品された”臨馬王堆帛書 五十二病方”を鑑賞して虜になってしまいました。 馬王堆帛書の臨書はできるものの、 字典もなく創作することが出来ないもどかしさを味わっていました が、今から20年程前、神田の中国関係の書店で”楚漢簡帛書典” を見い出し購入した時の喜びは今も忘れられません。 人も書も出会いです。
「四季の書」の随意部の参考手本には、隷書・草書・行書・
実用書部
【選出所感】
実用書の今回の昇段試験の結果は、 上位の方には大変厳しいものとなってしまいました。
蘭亭序の細字は、筆が立っていない様に思われます。 縦線に面が出ています。 もう少し円運動を活用して行書らしく書いていただきたいと思いま す。 半紙に6字ずつ書いてからしっかりと特徴をとらえて書くといいで すね。これから蘭亭序の後半になります。 中盤以上に筆が伸びやかに動いているので、まずは筆を立て、 筆管の下にある中指を細心の注意を払い操作してください。 ペン字蘭亭序は、骨格を把握する為の過程と考えても良いですね。 ペン先の開閉を利用し抑揚の変化をつける難しさはありますが、 毛筆細字と相似形となるように心掛けてください。 ペン字は和歌作品を含めて、柔和な転折を意識して、 じっくりとペンを進めていきましょう。
和歌のペン字の中における漢字は、 比較的よく書けていたのですが、 漢字につながる仮名の位置取りが難しかったようです。又、「 ひかり」「なりて」 などの仮名連綿が真下でうけてしまっていました。少しずつ右へ、 右へと流れていきましょう。ペン字といえども、 収筆の形状からとめ・はね・ はらいをしっかりと意識していただきたいものです。 はねから次の画へのつながりに旋律的な動きが欲しいですね。
実用書の今回の昇段試験の結果は、
蘭亭序の細字は、筆が立っていない様に思われます。
和歌のペン字の中における漢字は、