臨書部
皇甫誕碑 「虞忠臣彰於赴」 |
欧陽詢の書の中で最も洗練された書き振りをしているのは、”楷書の極則”と呼ばれた「九成宮醴泉銘」でしょうが、それよりも厳しさや切れ味を大切にした書き振りをしているのが「皇甫誕碑」ということでしょう。まずは1.入筆の方筆と打ち込みの強さ、2.右上がりの角度、つまり右上がり勾配が強いということを1月の課題で指摘しました。更に重要な要素は背勢が「九成宮醴泉銘」と比較すると俄然強いという点です。背勢とは、向かい合う線が内側に反り返る形を言います。ビア樽の反対に真ん中が内側に沿った形となります。1月分で臨書しました、「風」の字を「九成宮醴泉銘」の「風」と比べると、右サイドのえぐり方が強く、かぜがまえの中が非常に狭くなっています。このような背勢による字の組み立て方が一層「皇甫誕碑」を厳峻な作品に見せているのです。