2021年6月 優秀作品【一般】

選者選評 岡田明洋 佐藤綵雲

漢字規定部(師範合格者)

※作品は押すと単体で表示されます

天野 恵
縦に流れる行意に加え、懐の広さに魅了される秀作

漢字規定部(昇段試験合格者)

伊久美 善三郎
起筆の統一感がある。そのまま送筆部に移行しよう。
奥田 友美
直筆の美。左払いも充実した線となった。落款も佳し。
竹本 楓
豊かな線質が目を引く。渇筆を生かせば見栄えがする。
大村 紅仁乃
線の冴えに留意した作。もう少し頭でっかちにしても?
内海 理名
やや単調だが思い切りの良さがある。墨の入れ方よし。
萩尾 怜奈
王羲之の結体美を理解している。側筆も上手に表現。
市川 章子
董其昌の肉筆行書を範としてこれから書き進めるとよい。
竹本 聖
充実した線。更に若さを表現できるようにしよう。
【選出所感】
2021年1月よりウェブ上で配信した「四季の書」も6ヶ月を迎え、春季昇段試験を実施できたことを大変うれしく思います。締め切り日を5月末に変更したことで、予告から2ヶ月半を要することが出来ましたので、受験者の方は長期間勉強ができたのではないでしょうか。現師範の方には、受験者にとって良い意味で壁になってくれることを願っていましたが、皆さん、ご自分の得意書体で出品してくれました。条幅・規定・実用書のすべての師範作品をよい順に並べて、それと見比べて伍してやっていけるか判断しました。スマホ版レベルはA、上位半分以上ならB、上位4分の3はC、下位4分の1以下ならD。という基準です。すべての作品がB以上でないと師範合格はできません。
そのような基準で厳正に審査しました中、天野恵さんが新師範として合格されました。昇段試験の練成会で拝見した作より、数段良くなって出品されていました。作品サイズに関係なく、伸びやかで滑らかな運筆の行書は高い評価を得ました。条幅の蘭亭序も行間の広がりが表現できたならもっと見映えがしたことでしょう。これからも、行書を軸に腕を磨いていただきたいと切望します。
今回、審査に当たられた佐藤綵雲先生が、審査にも、作品にも若さが感じられるとおっしゃっていました。学生部のところで書きましたが、”毛筆の弾力を生かす”ことで、瑞々しい若い線が引けると思います。今回、残念ながら昇段できなかった方は、是非そのあたりのことを意識して頂ければと思います。

漢字規定部(月例課題)

山田 淥苑
重厚なる線。刻石文字に毛筆の柔らかさを加味した。
鈴木 藍泉
ゆったりとした書き振り。智永を髣髴とさせる。
廣瀬 錦流
中心の密。余白の疎。このコントラストが魅力です。
瀧 芳泉
漢隷の分間布白を巧みに表現。更に横画にうねりを!

条幅部

長野 天暁
送筆部の送り出しの強さが抜群です。起筆のあり方注意。
藤田 紫雲
いつもより小粒か?居延漢簡のおおらかさを求めよう。
長野 青蘭
横画の力強さを表現。更に軽妙さを入れると良い。
伏見 桃苑
全体感を上手にまとめた。皇甫誕のキリッとした線良し。
【選出所感】
師範の方は流石に多彩な書体、多彩な書き振りであり、師範挑戦者の方への良き壁となってくれました。
書道を続けることは純粋に書くことを楽しみ、自分探しをすることだと思います。師範に挑戦することはもちろん意義のあることですが、到達してしまえば、それで終わるのではなく、新たな表現の可能性を模索し続けていかなければならないと思います。
そのような意味で淳社師範の皆さんは、実に心強い存在です。新たなお仲間がおひとり増えました。是非皆さんでお育てください。

実用書部

伏見 桃苑
線が淀むことなく落下していく。毛筆の運びも見事です。
永嶋 妙漣
じっくりと起筆でペン先をためてからの送筆でよい。
【選出所感】
実用書の昇段試験があります。
私はあまり、実用書に重きをおいてはいませんでしたが、今は普段の生活の中で以下に細筆、ボールペンやつけペンを用いて美しく書かせるかに心を砕いています。
硬筆用具の持ち方ですが、それぞれの素材は異なりますが、親指・人差し指・中指の三本を機能的に動かすかがポイントだと考えています。
まずは、骨盤を立てたところの背筋を伸ばした姿勢をとってください。そして指先の形を確認しましょう。
親指の爪の裏の腹のところに軸(筆管)をあてます。絶対に親指を突き出してはいけません。親指が人差し指の上に被るのは論外です。
人差し指は弧を描くようにふっくらと構え、第二関節で軸に当たるようにします。軸が第三関節より下にくると鳥のクチバシ型となり無駄な力が入ってしまいます。
中指の爪の左上にタコが出来るように軸を支えてください。軸の上には出しません。薬指と小指が、親指の付け根のところにあたらないようにします。(子供の鉛筆の持ち方はこれが多く、軸のヘッドが自分の方ではなく、反対側に向いてしまいます。小さな卵を手のひらに入れて握りつぶさないような気持で書いてみてください。
更に和歌を書くときは、漢字と仮名の文字の大小を考慮しましょう。仮名は文字が小さすぎ、字間が空いている為に流れが出ません。字間を詰めて次の文字に続く感じで、沢山書きましょう。力が抜けて線が美しく見栄えがするようになりますよ。
先月号でお示しした、まずは鉛筆でゆっくり位置を確認しながら書いてから、数日経ってからペンで自己添削するつもりで書けば必ず力はつきます。是非お試しあれ。