2023年03月 お手本【一般 臨書部】

臨書部

「臨 皇甫誕碑」
授命結纓殉國

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私は「楷書の極則」と言われた欧陽詢の「九成宮醴泉銘」より「皇甫誕碑」のほうが好きです。九成宮醴泉銘のほうが、理知的でありスマートであり、構築性もはるかに優れています。それにもかかわらず、皇甫誕碑の方に心寄せられるのは、皇甫誕碑の方が一貫性・統一性がないからなのではないかと思います。一月の課題の中の「風」を見ても九成宮は、カゼガマエに虫が接することなく、求心性が発揮されています。その「虫」の位置も皇甫誕碑の方が、カゼガマエにぶら下がっているような、しまりのないものです。「世」も一画目の横画が左右にスッと伸びているのですが、その為に字形全体は扁平に見えてしまします。「忠」や「臣」なども原本を見ますと、私の書いた範書よりもはるかに扁平につぶれているのです。唐楷は中心より右サイドの方が長い横画ですが、「虞」の最後から三画目の横画は左サイドの方が長い書き方になっています。つまり隋の墓誌銘のような書き振りをしているのです。このように唐代の楷書様式として完成されていない要素が私は好きなのかもしれません。完成期よりは変遷期のものへの愛着が私の内部にあるのでしょう。